誘導電動機の基礎・構造②~誘導機の重要公式とT型・L型等価回路~<四機器>

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にて、主に「誘導電動機の基礎・構造回転磁界が生じる仕組み」について説明しました。今回は、電験で頻出される超重要公式と、誘導機計算には欠かすことのできない「T型・L型等価回路」について説明したいと思います。

超重要公式

回転磁界の回転速度(同期速度)

同期速度は以下の公式で表されます。

$$N_{s}=\frac{120f}{p}[min^{-1}]$$

※f:電源周波数 p:極数

同期速度の公式は以下のように導出できます。

まず<画像1>をご覧ください。

<画像1>

<画像1>はある位相の瞬間を切り取ったものです。この瞬間の合成磁界はNとSの二極に置き換えることができ、これを二極機といったりします。($p=2$)

この回転磁界は、↓<画像2>にあるように、一周期で一周します。

これを一般的にすると、「極数$p$の回転磁界は一周期で$\frac{2}{p}$回転する。」とあらわすことが出来ます。($p=4$)の場合には、一周期で0.5回転するということになりますね。

<画像2>

ここで用語の確認ですが、「周期:T[s]」というのは交流が一回振動するのにかかる時間でした。ということで、単位時間当たりの回転数は$\frac{\frac{2}{p}}{T}[sec^{-1}]$となり、周期:Tは、周波数$f$の逆数なので、$$ \frac{\frac{2}{p}}{T}[sec^{-1}] =\frac{2f}{p} [sec^{-1}] $$となります。これを「一秒あたり」から「一分当たり」に変換すると、同期速度の式$$N_{s}=\frac{120f}{p}[min^{-1}]$$となります。

回転子の回転速度

回転子の回転速度は以下の式で表されます。

$$N=\frac{120f(1-s)}{p}[min^{-1}]$$

※$s$:滑り

滑り

誘導電動機の回転子の回転速度は、回転磁界の回転速度(同期速度)よりも遅い状態で運転されます。なぜなのかという理由の理解には、回転のメカニズムを知る必要があります。

回転メカニズムを大まかに説明すると以下の通りになります。

  1. 固定子に三相交流を印加し、回転磁界が発生。
  2. 回転磁界が、回転子を横切る。(導体を貫く磁束の量の変化)
  3. 回転子に誘導起電力が発生し、電流が生じる。
  4. 回転子に生じた電流と磁界により、回転トルクが発生。

これが誘導機の回転メカニズムになります。

つまり、同期速度>回転子の回転速度のとき、電動機としてのトルクが発生するわけです。同期速度=回転子の回転速度のとき、磁界は回転子を横切りませんので、回転トルクが発生しない=減速するということになります。このようにして、誘導電動機の回転子は回転磁界の回転速度(同期速度)よりも遅い状態で運転されるのです。

滑り”というのは、回転磁界の回転速度(=同期速度)と、回転子の回転速度の差が、同期速度に対してどれくらいの割合か。というものになります。以下が公式です。$$s=\frac{N_{s}-N}{N_{s}}$$

例えば、同期速度$N_{s}=1800$、回転子の回転速度$N=1750$とすると、$$N_{s}=\frac{1800-1750}{1800}=0.027777….$$となります。

回転角速度

上記の回転速度の単位は〇[$min^{-1}$]でした。これは「一分間に〇回転する」という意味ですね。

ではこれを、角速度である「一秒間で〇rad回転する」という意味の[$rad/s$]に直してみましょう。

まず1radの定義を確認しましょう。1radの定義は以下の通りです。

円周上でその円の半径と同じ長さの弧を切り取る2本の半径が成す角の値

引用:ラジアン – Wikipedia

もう少しわかりやすく言うと、「半径に対する円弧の長さの比」です。<画像3>をご覧ください。

<画像3>

<画像3>中にあるように、360°は2π[rad]であると分かりました。

では「二回転」というのは何radになるでしょうか?

二回転は$360°×2=720°$ですので、二回転は$2π×2=4π[rad]$ということになります。これを一般化すると、$x$回転は$2πx[rad]$になります。

次に「一分間で一回転」を「一秒間で〇回転」に直しましょう。

これは単純に$\frac{1}{60}$をかけてあげればいいですね。

つまり、回転角速度$ω[rad/s]$は、$$ω=\frac{2πN}{60}[rad/s]$$になります。

 

等価回路

誘導機は等価回路で表すことが出来ます。「励磁回路」の位置によって「T型」「L型」の2つの表し方がありますが、元となる回路図は<画像4>のようになります。左側が一次側、すなわち固定子側、右側が二次側、すなわち回転子側になります。

<画像4>一相分

ここで注目してほしいのが、二次誘導起電力$s\dot{E}$と二次側リアクタンス$jsX_{2}$についている$s$です。

これは先に説明した「滑り」になりますが、この滑りによって二次側誘導起電力と二次側リアクタンスが変わってきます。

ここで「ファラデーの電磁誘導の法則」の式を見てみましょう。誘導起電力$e$は、$$e=-N\frac{dΦ}{dt}$$で求められますが、この式の意味するところは、「導体を貫く磁束の量の変化量が大きいほど誘導起電力は大きくなる」ということです。つまり同期速度に対して、回転子の回転速度が低いほど(滑りが大きいほど)、誘導起電力は大きくなります。

回転子が静止($s=1$)で $s\dot{E_{2}}$ が最大となり、回転子の回転速度が上昇するにつれて($s$が小さくなるにつれて) $s\dot{E_{2}}$ は小さくなります。

二次側リアクタンスは $jsX_{2}=j2πsfL$ です。つまり二次側周波数が一次側の$s$倍になるということですね。

これは脳内イメージが出来る方はわかりやすいかと思いますが、滑りが大きいほど、二次側に誘導される電流の向きが素早く変わります。これは「滑りが大きいほど、二次周波数が大きくなる」ということです。

そして<画像4>中の左右の独立した回路を、取り扱いやすいように繋げてしまおうというのが、これから説明する「T型」「L型」等価回路ということになります。

次に行く前に、<画像4>の二次側回路に少し手ほどきしましょう。

<画像5>

<画像5 左>は二次側(回転子側)回路の各パラメータをすべて$s$で割ったものになります。

<画像5 右>は$\frac{R_{2}}{s}$を$R_{2}$と$\frac{1-s}{s}R_{2}$に分解したものになります。

$$ \frac{R_{2}}{s}= R_{2} + \frac{1-s}{s}R_{2} $$

このように変形する理由は、二次側の$R_{2}$による損失と、 $\frac{1-s}{s}R_{2} $ による回転子の機械的出力に分けることが出来るからです。(このようになる理由は後ほど出てきます。)

では、次に行きましょう。

T型等価回路

T型等価回路は、<画像6>のように、励磁回路が一次側と二次側の間に入ります

<画像6>

励磁回路は、磁界を発生させるための回路になります。$g_{o}$と$b_{o}$はそれぞれ励磁コンダクタンス励磁サセプタンスになります。これらは、励磁抵抗励磁リアクタンス逆数で、「電流の流れやすさ」になります。

このようにして考えたほうが、並列計算が楽になります。

回路図にて注目して頂きたいのが、二次側の各記号に「」がついていることです。

これは「二次側の値を一次側に換算したものである」ということです。「一次側を二次側に換算したもの」も用いられますがが、電験では「二次側を一次側に換算したもの」のほうがよく用いられている感じがします(主観です)。一次換算・二次換算に関しては、下記リンクの記事で説明しています。是非ご覧ください。

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L型等価回路

L型等価回路は<画像7>のように、T型等価回路とは違い、「励磁回路」が左に移動したものになります。

<画像7>

「L型等価回路」を用いることが出来るのは、一次側電流と二次側電流の一次換算値がほぼ等しいときになります。

つまり「励磁電流が小さいとき」ということになります。

電験ではこの「L型等価回路」をよく用いますので、この等価回路を用いて各式を確認していきましょう。

一次負荷電流

一次側インピーダンスと二次側インピーダンス(一次換算値)を合成すると、$$\dot{Z}=R_{1}+\frac{R_{2}^{‘}}{s}+j(X_{1}+X_{2}^{‘})$$

$$\vert \dot{Z}\vert=\sqrt{(R_{1}+\frac{R_{2}^{‘}}{s})^{2}+(X_{1}+X_{2}^{‘})^{2}} $$

となり、電流は、

$$I_{1}^{‘}=\frac{{V}_{1}}{\sqrt{(R_{1}+\frac{R_{2}^{‘}}{s})^{2}+(X_{1}+X_{2}^{‘})^{2}}}$$となります。

二次入力

二次側に入力される電力$P_{2}[W]$は、<画像4>右にあるような元の形、$\frac{R_{2}^{‘}}{s}$で消費される電力になります。つまり二次入力 $P_{2}[W]$ は、$$P_{2}=3\frac{R_{2}^{‘}}{s}I_{1}^{‘2}$$で求められます。

等価回路は一相分ですので、相数が3の場合必ず3倍して下さい。以後この注意事項は省略します。

二次銅損

二次銅損は$R_{2}$で消費される電力になります 。$$ P_{c2}=3R_{2}^{‘}I_{1}^{‘2}$$

機械的出力

では、上記の二次入力から二次銅損を引いてみましょう。それが機械的出力$P_{o}$となります。

\begin{eqnarray} P_{o}&=& P_{2}-P_{c2} \\ &=& 3\frac{R_{2}^{‘}}{s}I_{1}^{‘2} – 3R_{2}^{‘}I_{1}^{‘2} \\&=&3(\frac{R_{2}^{‘}}{s}-R_{2}^{‘})I_{1}^{‘2} \\&=&3\frac{1-s}{s}R_{2}^{‘}I_{1}^{‘2}\end{eqnarray}

ピンときた方もおられると思いますが、式の中に$\frac{1-s}{s}R_{2}^{‘}$ が出現しました。

重要な関係式

上で求めた「二次入力」「二次銅損」「機械的出力」の関係を見てみましょう。

$$二次入力P_{2}=3\frac{R_{2}^{‘}}{s}I_{1}^{‘2}$$

$$二次銅損P_{c2}=3R_{2}^{‘}I_{1}^{‘2} $$でした。二次銅損$P_{c2}$を二次入力$P_{2}$を用いて表すと、$$P_{c2}=sP_{2}$$となることが分かります。

つまり、滑りが大きいほど二次銅損が大きくなります。

次に、

$$二次入力P_{2}=3\frac{R_{2}^{‘}}{s}I_{1}^{‘2}$$

$$機械的出力P_{o}= 3\frac{1-s}{s}R_{2}^{‘}I_{1}^{‘2} $$

でした。機械的出力$P_{o}$を二次入力$P_{2}$を用いて表すと、$$P_{o}=(1-s)P_{2}$$となることが分かります。

つまり、滑りが大きいほど機械的出力は小さくなっていきます。

以上より、次の関係が導かれます。

!重要!
$$二次入力P_{2}:二次銅損P_{c2}:二次出力P_{o}=1:s:1-s$$

この関係式は電験の試験でよく用いますので、使えるようにしてくださいね!

トルク

トルクTは次の式で表されます。$$\begin{align}T&=\frac{P_{o}}{ω}\\&=\frac{3\frac{1-s}{s}R_{2}^{‘}I_{2}^{‘2}}{\frac{2πN_{s}}{60}(1-s)}\\ &=\frac{3\frac{R_{2}^{‘}}{s}}{\frac{2π}{60}\frac{120f}{p}}\frac{V_{1}^{2}}{\sqrt{(R_{1}+\frac{R_{2}^{‘}}{s})^{2}+(X_{1}+X_{2}^{‘})^{2}}^{2}}\\ &=\frac{3p}{4πf}・\frac{R_{2}^{‘}}{s}・\frac{V_{1}^{2}}{(R_{1}+\frac{R_{2}^{‘}}{s})^{2}+(X_{1}+X_{2}^{‘})^{2}}\end{align}$$

三種ではこの導出は不要かと思いますが、二種以上になってくると、「最大トルクとなる滑り$s_{max}$を求めよ。」というような問題が出ます。そうなると、この長い数式をいじくって微分するという作業が必要になります。なので二種以上の方はこの式を導けるようになってほしいですが、三種の方は「トルクは電圧の2乗に比例する」を覚えておけば問題ないかと思います。

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