【重要公式】表皮効果とトルクの比例推移を分かりやすく解説!

この記事を読む前に、下のリンクで「誘導電動機の基礎」を学ぶと理解が深まるかと思います。

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表皮効果とは?

表皮効果とは、

交流電流が導体を流れるとき、電流密度が導体の表面で高く、表面から離れると低くなる現象のこと

引用:表皮効果 – Wikipedia

のことを言います。

電流密度というのは単位面積あたりの電流値になりますので、<画像1>を用いた場合以下の式になります。

画像1

$$電流密度J=\frac{I}{S}[A/m^{2}]$$

電験でよく問われるのは、「表皮深さ (浸透深さ ):δ」が何に反比例するのかということです。表皮深さというのは「電流が表面の電流の$\frac{1}{e}$となる深さ」の事を言います。ここで登場した”e“というのは”ネイピア数”のことで、$e=2.71826…….$と続く無理数です。したがって、$$\frac{1}{e}=\frac{1}{2.71828….}=0.3678..⇒ 約36.8[\%]$$

であり、電流が表面の電流の$約36.8[\%]$となる深さを言います。表皮深さは以下の式で表されます。

$$δ≒\sqrt{\frac{2}{ωσμ}}=\sqrt{\frac{2ρ}{ωμ}}$$
$$(※ω:角速度 σ:導電率 ρ:抵抗率 μ:透磁率)$$

となります。

この式の導出を行いたいところですが、正直難しいです。電験一種理論に出題される「マクスウェル方程式」の知識が必要になりますし、計算力も必要になります。導出の難易度は一種をも飛び越えますのでここでは割愛したいと思います。

そこで今回は、直感的に公式が理解できるような説明を見つけましたので、自分なりのアレンジを加えて説明してみます。

表皮効果の直感的な理解

まず<画像2>のように導体中に交流電流が流れているとしましょう。ここでは見やすさのため、一本の矢印で代替していますが全体に流れていると考えてください。電流が流れると、「右ねじの法則」により周囲に磁界が発生します。

画像2

交流電流を考えていますので、電流の大きさと向きは変化し、それに伴って周囲に生ずる磁界も大きさと向きが変わります。ここで、「レンツの法則」の登場です。

画像3

レンツの法則は、「磁界の変化を妨げる方向に電流が流れる」というものでした。したがって磁界が増加しようとするとき、<画像3>のような渦電流が磁界の周囲に生じます。

画像4

<画像4>と<画像2>を見比べていただくと、<画像4>では導体の内側で打ち消しあっているのが分かりますでしょうか?

これによって↓<画像5>のように、内部にいくほど、電流密度が小さくなっているのです。

画像5

ここでもう一度「表皮深さ」の式を見てみましょう。$$δ≒\sqrt{\frac{2}{ωσμ}}$$

$ω$は$ω=2πf$で表され、周波数に比例します。周波数が大きくなれば、磁界の変化の割合が大きくなり、妨げる電流も大きくなります。つまり、より元の電流が打ち消され、表皮深さが浅くなっていくイメージです。導電率”$σ$”も、透磁率”$μ$”も大きくなれるほど、妨げる電流が大きくなるとイメージできるかと思います。抽象的な説明になりましたが、こんなイメージを持っていれば公式は理解の手助けになるかと思います。

(※厳密な説明ではないので、あくまでも公式を覚える際のイメージとして参考にしてください。)

速度ートルク特性曲線とトルクの比例推移とは?

誘導電動機の速度ートルク特性曲線とは?

速度ートルク特性曲線というのはその名の通り、誘導機の”速度”と”トルク”の関係を表したものになります。横軸に滑り$s$、縦軸にトルク$T$をとったものであり、<画像6>のようなグラフになります。

画像6

電験機械科目を学習されたことのある方なら、一度は見たことがあるかと思います。大変重要なグラフになります。ここでのポイントは以下の通りです。

・$s=1$の時のトルクを「始動トルク」という。
・最大トルクは「停動トルク」とも呼ばれる。
・通常運転範囲では、トルクと滑りは比例関係であるとみなせる。
前半二つは用語の確認なので問題ないかと思いますが、3つ目について「あれ?反比例ではないの?」と思われる方もいるかと思いますので、少し説明します。確かに、グラフを「左から右」にみると、トルクが小さくなっているので反比例と考えがちですが、左から右に行くにつれて滑りは小さくなっていることを確認してください。つまり、滑りが大きくなる(右から左)とトルクは大きくなっているので、「トルクと滑りは比例関係である」といえます。重要です。

誘導機の速度ートルク特性曲線とは?

<画像6>は誘導”電動”機の「速度ートルク特性曲線」でしたが、このグラフには続きがあります。以下の<画像7>の通りです。
画像7
そうです。<画像6>は「電動機の領域」を切り取ったものだったのですね。その両サイドにはsが「2>s>1」のゾーンと「0>s>-1」のゾーンが存在するのです。それぞれは、
2>s>1⇒制動
1>s>0⇒電動
0>s>-1⇒発電
と呼び、今回は本題ではありませんのでグラフさえ描けるようになれば大丈夫かと思います。
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トルクの比例推移とは?

では本題の「トルクの比例推移」に入りましょう。

この比例推移というのは、「任意の滑り(回転速度)の時に、任意のトルクを取り出したい」ときに用います。先ほどの<画像6>でもあったように、ある滑りの時のトルクは一点に決まってしまいます。では例えば、「始動時(s=1)にもっと大きなトルクを出したい!!」となった場合どうすればよいのでしょうか?

答えは、

二次抵抗を大きくする

となります。ここで<画像8>をご覧ください。

画像8

<画像8>では、二次抵抗値が異なった3つの場合の「速度ートルク特性曲線」が描かれています。これらの抵抗値は$$r_{3}>r_{2}>r_{1}$$の関係があります。二次抵抗値が大きくなるにつれて、グラフが左側にシフトするイメージになります。ここで始動時(s=1)を見てみましょう。

抵抗値が大きいほど始動トルクは大きくなっています。重要です。

二次抵抗値を大きくすると、始動トルクが大きくなる。

もう一度<画像6>をご覧いただくと、同一トルクとなる3点が見て取れるかと思います。この時の滑りをそれぞれ$s_{1},s_{2},s_{3}$とすると、次の関係が現れます。

$$\frac{r_{1}}{s_{1}}=\frac{r_{2}}{s_{2}}=\frac{r_{3}}{s_{3}}$$

例として二次抵抗値が、$r_{1}$と$r_{2}$の二つを比べて考えてみましょう。分かりやすいように極端な例で説明しますのでご了承ください。

比例推移を用いた例

今、二次抵抗値が$r_{1}=100[Ω]$、滑りが$s_{1}=0.01$の状態で運転している。この時”トルクを変えないで”滑りを$s_{2}=0.02$として運転したい。二次抵抗値を何[Ω]とすればよいか?
では、解いてみましょう。
トルクを変えない=一定としたいので、トルクの比例推移の式を用います。
トルクの比例推移の式、$$\frac{r_{1}}{s_{1}}=\frac{r_{2}}{s_{2}}$$より、$$\frac{100}{0.01}=\frac{r_{2}}{0.02}$$ $$\begin{align}r_{2}&=\dfrac{0.02}{0.01}\cdot 100\\& =200[Ω]\end{align}$$
となりました。結果低い回転速度で同じトルクを出せるようになりましたね。
今回は二次抵抗の値を求めましたが、滑りを求めることもあります。自由自在に式を操れるよう、過去問をたくさん解いてください(下に過去問リンクを貼っておきますのでご活用ください。)

回転子の抵抗値を変える方法

もうひと踏ん張りです。

ここまで「表皮効果」と「トルクの比例推移」を学んできました。この二つをなぜ一緒に学んだかというと、「特殊かご型誘導電動機」を理解するためです。

誘導電動機の種類については、こちらをご覧ください。

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いきなり「特殊かご型誘導電動機」に行く前に、抵抗値を変える方法を挙げてみましょう。

  1. 「巻線型誘導電動機」を用いて、可変抵抗である二次抵抗の値を変化させる。
  2. 回転子導体の配置・形状に工夫をした「特殊かご型誘導電動機」を用いて、始動時と通常時の抵抗値を変化させる。

巻線型誘導電動機の場合

まず巻線型誘導電動機の仕組みを見てみましょう。

画像9

回転子がスリップリングを介して、可変抵抗である二次抵抗に接続されています。

簡単な話で、始動時には二次抵抗(可変抵抗)の値を大きくしてあげればいい。それだけですね!

回転子抵抗値を$r_{a}$、可変抵抗の元の値を$r_{f}$(この時の滑り$s_{1}$)、変化後の値を$r_{f}^{‘}$(この時の滑り$s_{2}$)とすると、次のグラフのようになります。

画像10

この時同一トルク$T_{1}$において、次の関係式が成り立ちます。$$\frac{r_{a}+r_{f}}{s_{1}}=\frac{r_{a}+r_{f}^{‘}}{s_{2}}$$

抵抗値が大きいままだと、銅損が大きくなってしまうので、始動以降は可変抵抗の値を小さくしていく必要があります。

特殊かご型誘導電動機

特殊かご型誘導電動機には「二重かご型」と「深溝型」の二種類あります。それぞれ見ていきましょう。

二重かご型

「二重かご型」は画像のように、回転子表面に細い導体、回転子内側に太い導体を配置します。

抵抗値$R$は、$$R=ρ\frac{l}{A}   (A:断面積)$$により求められ、断面積に反比例しますので、細い導体のほうが抵抗値は大きくなりますね。ここで復習ですが、二次周波数は$f_{2}=sf_{1}$より求められるので、始動時(s=1)の時、二次周波数は大きくなります。

周波数が大きくなると、表皮効果によって回転子表面の細い導体に多くの電流が流れます。

つまりこれで、始動時に抵抗値が大きくなり始動トルクの改善を図れるわけです。

画像11


回転数がが上昇(s→0)となっていくと、各導体に電流が均等に流れるようになり、抵抗値が下がることで銅損も抑制できます。

これが、「二重かご型」の仕組みです。

深溝形

「深溝型」も考え方は「二重かご型」と同様です。

始動時に回転子表面の導体に電流が集中し、抵抗値が大きくなります。ただ、「二重かご型」のように回転子表面の導体が細くなっているわけではありません。ということは、始動時の抵抗は「二重かご型」ほど大きくなるわけではありません。

したがって、始動特性は「二重かご型」よりも若干劣ったものになります。

画像12

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その内容と分かりやすさは、表紙にも記載のある通り、まさに、「モータのことはこれ1冊でOK」な本となっています

【もっと深く学ぶ!】[改訂版]徹底解説 電動機・発電機の理論

こちらの本は上級者向けということで、電験一種・二種の方向けにオススメできる一冊となっております。今回取り扱った誘導電動機についてももちろんの事、個人的には同期機の「d-q-0座標」関連の理解に大きく貢献してくれました。

電動機・発電機についてもう一歩深く学びたいという方は、是非手に取ってみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

電気系の情報発信をしています。