誘導電動機の基礎•構造①〈四機器〉

皆さんこんにちは!NORIです!

今回から「誘導電動機の基礎•構造」ということで、誘導電動機についての解説記事に入っていきます。

誘導電動機は四機器の中で1番目立っていて(偏見ですが)、得点しやすい範囲でもあります。これは電験三種だけではなく、電験二種一種でも同様かと思います。

「誘導電動機の基礎•構造」を抑えることで、確実に得点源としていきましょう。

それでは、レッツゴ〜!

誘導電動機の構造

誘導電動機は、主に固定子回転子に分けることができます。それぞれの構造を見ていきましょう。

固定子(ステータ)

固定子の主な役割は、回転磁界を発生させることです。

固定子は主に次の部品からなっています。

  • 固定子枠
  • 固定子鉄心
  • 固定子巻線

調べれば直ぐに出てくるかと思いますが、イラストを貼っておきます。<画像1>

<画像1>
 

固定子枠・・・イラストを見ると固定子枠にはひだひだがついているのが分かりますか?これは表面積を大きくして放熱しやすくするためのものです。

固定子鉄心・・固定子鉄心にはケイ素鋼板を積層した積層鉄心が用いられています。積層鉄心というのは、薄い電磁鋼板を1枚1枚絶縁したものを、何枚も重ねたものとイメージするとわかりやすいと思います。なぜ絶縁したものを積層するかというと、「渦電流損」を軽減できるからです。渦電流は”ジュール損”を発生し、損失を大きくします。<画像2>参照。

<画像2>

<画像2>右を見ていただくと、電磁鋼板が積層されていますが、これらは一枚一枚表面が絶縁されています。これによって「積層方向と垂直に磁束が貫いたとき」、渦電流損を低減できます。

固定子巻線・・固定子巻線は三相交流電流が流れ、回転磁界を発生させます。回転磁界の発生原理を以下に説明します。

回転磁界の発生原理

固定子巻線は<画像3>のように、u相・v相・w相が120°の間隔をもって配置されています。

<画像3>

結論を先に述べると「u相・v相・w相に120°ずつ位相のずれた交流電流を流すと、回転磁界が生ずる」のですが、まだピンと来ないかと思います。

ここで、仮に u相・v相・w相各相同相の電流が流れているとし、各相をそれぞれ見ていきましょう。

三相同相の場合

<u相>

交流電流が””の期間は電流が<画像4>右図のように流れ、磁界が右向きであるとします。ということは、負の期間は電流の向きが変わり磁界は左向きになります。

<画像4>

この磁界の向き大きさを矢印で、横軸上に置いたのが、<画像4>左の図になります。位相が$\frac{π}{2}$の時、正の方向に電流が最大になるので、磁界も最大となります。

<v相>

v相・w相にもu相同相の電流が流れていると仮定したので、電流波形はu相のものと同じになります。しかし、巻線配置に関してはそれぞれ120°ずつずれているので、↓<画像5>のように、磁界の方向のみが異なることになります。

<画像5>

$θ$が$\frac{π}{2}$の時電流が最大で、磁界も最大。この時方向で言えば左下になります。

<w相>

<画像6>

$θ$が$\frac{π}{2}$の時電流が最大で、磁界も最大。このとき方向は左上になります。

~結果~

以上のu相・v相・w相の検討結果により、 $θ$が$\frac{π}{2}$の時、各相同相かつ同じ大きさの磁界が120°ずつずれて発生し、ベクトルの合成を行うと打ち消しあって」となることが分かります。

今は例をとって $θ$が$\frac{π}{2}$ の時の磁界を見ましたが、どの位相のタイミングを取っても、同相かつ大きさが同じで120°ずつずれているので、磁界は打ち消しあいます。

結論、

「各相同相の交流電流を流すと、回転磁界は発生しない」

となります。

次に各相に流れる交流電流の位相を120°ずつずらしてみます。u相を基準として、v相を120°遅れ、w相を120°進みとしましょう。

位相の進み•遅れの覚え方はこちら↓の記事で解説しています。興味のある方は是非ご覧ください。

位相を120°ずつずらした場合

<u相>

u相の波形・磁界の方向は上の<画像4>と同じもので、これを基準とします。

<画像4>再掲

<v相>

<画像7>

<画像7>は、v相u相に比べ120°($\frac{2π}{3}rad$)位相が遅れたものになります。 $\frac{π}{2}rad$ の時、u相と同相だった場合の磁界の方向は左下向きでしたが、今回は右上向きになり、大きさも小さくなっています。

<w相>

<画像8>

<画像8>は、w相u相に比べ120°($\frac{2π}{3}rad$)位相が進んだものになります。 $\frac{π}{2}rad$ の時、u相と同相だった場合の磁界の方向は左上向きでしたが、今回は右下向きになり、大きさも小さくなっています。

~結果~

以上の結果より、$\frac{π}{2}rad$の瞬間の磁界を合成すると、右向きの磁界が発生することになります。

<画像9>

では様々な位相のタイミングでの各巻線により生ずる磁界を、横軸に並べたものを描いてみます。↓<画像10>

<画像10>

では各位相のタイミングの3つのベクトルを、ベクトル合成してみましょう。

<画像11>

ベクトル合成を行うと↑<画像11>のようになりました。時間の経過とともに右回りに回転しているように見えます。

少々長くなりましたが、結論、

「u相・v相・w相の位相をそれぞれ120°ずつずらすと、回転磁界が発生する」

ということになりました。固定子巻線では以上の事が行われています。

回転(ロータ)

回転子の主な役割は、回転磁界をうけ、電磁力により回転する事です。

回転子は大きく分けると、

  • かご型
  • 巻線型
  • 特殊かご型

があります。

かご型

かご型」はもっとも一般的な電動機で、導体バー(アルミニウム)の両端を端絡環(円形のもの)で短絡したもので、かごのような見た目をしています。

<画像12>

<特徴>

良い点

  • 構造が簡単で、ブラシやスリップリングがないため、保守が容易である。
  • 構造が簡単であるため、安価である。

悪い点

  • 巻線型誘導電動機に比べ始動トルクが小さい。
  • 始動時、”突入電流”が大きくなるため、これを軽減するための工夫が必要である。

巻線型

巻線型は、回転子に三相巻線を用います。<画像13>を見ていただくと分かる通り、三相巻線にスリップリングブラシを経由し、可変抵抗(二次抵抗)に接続されています。この可変抵抗の値を変化させることで、始動特性の改善や速度制御を行うことができます。始動後に二次抵抗は不要となりますので短絡します。

<画像13>

<特徴>

~良い点~

  • 二次抵抗の値を変化させることで、始動特性の改善・速度制御ができる。

~悪い点~

  • 二次抵抗による損失が発生する。

特殊かご型

特殊かご型は、回転子のスロット(導体が入る箇所)を特殊な形状とし工夫することで、始動トルクの改善を図ったものになります。特殊かご型はさらに、「深溝型」と「二重かご型」に分類されます。

以下の<画像13><画像14>は”始動時”の電流密度を表したものになります。

<画像14>

 

<画像15>

いきなり「電流密度を表したものになります」と言われても困ります。と思われる方もおられるかもしれませんが、これを理解するには「抵抗値とトルクの関係」、「表皮効果」についての理解が必要になります。

なのでこの記事では、「特殊かご型には、”深みぞ形”と”二重かご型”の二つがあるんだなぁ」くらいに思っていてください。後日別の記事に記します。

~追記~ 表皮効果とトルクの比例推移について

表皮効果とトルクの比例推移に関する記事を書きました。ぜひご覧ください。

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終わりに

今回は誘導電動機の構造・基礎。そして、回転磁界の発生原理等々説明しました。

次回は、誘導電動機の等価回路や、電験で出題される問題を解くための重要公式について解説します。ぜひご覧ください!

お疲れさまでした(>_<)

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