問題
周波数が60Hzの電源で駆動されている4極の三相同期電動機(星形結線)があり、端子の相電圧V[V]は$\frac{400}{\sqrt{3}}V$、電機子電流$I_{M}[A]$は200A、力率1で運転している。1相の同期リアクタンス$x_{s}[Ω]$は1.00Ωであり、電機子の巻線抵抗、及び機械損などの損失は無視できるものとして、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)上記の同期電動機のトルクの値[N・m]として最も近いものを、次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)12.3 (2)368(3)735(4)1270 (5)1470
(b)上記の同期電動機の端子電圧及び出力を一定にしたまま界磁電流を増やしたところ、電機子電流が$I_{M1}[A]$に変化し、力率$cosθ$が$\frac{\sqrt{3}}{2}(θ=30°)$の進み負荷となった。出力が一定なので入力電力は変わらない。図はこのときの状態を説明するための1相の概略のベクトル図である。このときの1相の誘導起電力E[V]として、最も近いEの値を次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)374 (2)387 (3)400(4)446 (5)475
- 解答を見る
- (a)・・・(3)
(b)・・・(3)
前提知識
①電動機出力$P[W]$を求める式。
ただし、$V[V]$は電動機端子電圧(相)、$E[V]$は電動機誘導起電力(相)。
②回転子回転角速度$ω[rad/s]$を求める式。
③電動機のトルク$T[N・m]$を求める式。
解説
(a)
まず電動機出力$P[W]$を求めるために、電動機の誘導起電力$E[V]$を求めましょう。題意からベクトル図を書いてみると<画像1>のようになります。
このベクトル図から立式すると、$$\dot{V}=\dot{E}+jx_{s}\dot{I}_{M}$$
となります。力率1で運転しているので、端子電圧$V$と電機子電流$I_{M}$が同相になります。ということで、端子電圧$\dot{V}$を基準としてベクトル図を描くと<画像2>のようになります。
[adcode] 同期電動機の等価回路 まず同期電動機の等価回路図を<画像1>に示します。 [caption id="" align="aligncenter" width="450"] 画像1[/caption] ここから[…]
<画像2>のベクトル図より、
$$\begin{align}E&=\sqrt{V^{2}+(x_{s}I_{M})^{2}}\\&=\sqrt{(\frac{400}{\sqrt{3}})^{2}+(1.00×200)^{2}}\\&=305.5[V]\end{align}$$
『前提知識①』より、電動機出力$P[W]$を求めると、
$$\begin{align}P&=\frac{3×\frac{400}{\sqrt{3}}×305.5}{1.00}×\frac{1.00×200}{305.5}\\&=138560[W]・・・①\end{align}$$
『前提知識②』より、回転角速度$ω[rad/s]$を求めると、
$$\begin{align}ω&=\frac{2π}{60}×\frac{120×60}{4}\\&=188.5[rad/s]・・・②\end{align}$$
①式、②式を『前提知識③』に代入すると、トルク$T[N・m]$は、
$$\begin{align}T&=\frac{138560}{188.5}\\&≒735[W]\end{align}$$
よって(a)の答えは(3)となります。
(b)
ここで問題のベクトル図を再掲します。
当問題はベクトル図中の$\dot{E}$の大きさを求めよ。という問題になります。まずは$\dot{I}_{M1}$の大きさを求めてあげましょう。
$$cos30°=\frac{\sqrt{3}}{2}$$より、
$$\frac{I_{M}}{I_{M1}}=\frac{\sqrt{3}}{2}$$
$$\begin{align}I_{M1}&=\frac{200}{\frac{\sqrt{3}}{2}}\\&=230.9[A]\end{align}$$
ここで、ベクトル図に補助を加えると<画像3>のようになります。
三平方の定理を用いると、次のような立式が出来ます。
$$E=\sqrt{(V+x_{s}I_{M1}sin30°)^{2}+(x_{s}I_{M1}cos30°)^{2}}$$
この式に数値を代入すると、
$$\begin{align}E&=\sqrt{(\frac{400}{\sqrt{3}}+1.00×230.9×\frac{1}{2})^{2}+(1.00×230.9×\frac{\sqrt{3}}{2})^{2}}\\&≒400[V]\end{align}$$
よって(b)の答えは(3)となります。
同期機関連記事&オススメの書籍紹介
関連記事
[adcode] 短絡比とは? 短絡比$K$は以下の式で定義されます。 $$短絡比K=\frac{無負荷飽和曲線(開放時)で定格電圧が発生するときの界磁電流I_{f1}}{短絡曲線(短絡時)で定格電流が流れる時の界磁電流I_{f2}}[…]
[adcode] 電機子反作用とは? 電機子反作用とは、 界磁電流が作る磁束に、電機子巻線の作る磁束が合成され磁束の歪みが生じる事 を言います。 文章ですぐに理解できる方は中々いないかと思いますので「同期発電機の原理」から説明して[…]
モータ技術のすべてがわかる本
こちらの本は本章で取り扱った同期モータのみならず、誘導モータ・直流モータに関しても非常に分かりやすく詳細に書いてあります。また、この本の最大の特徴ともいえるのが、フルカラーという点です。フルカラーイラストをふんだんに用いていますので、機械科目において重要な「脳内でのイメージ材料」を鮮明に手に入れることが出来るでしょう。
表紙にも記載のある通り、まさに、「モータのことはこれ1冊でOK」な本となっています。
管理人が選ぶオススメ書籍3選
こちらの記事の書籍評価は完全主観に基づいたものです。あくまでも参考程度にご覧ください。 こんにちは!NORIです! 今回は電験機械科目の学習をサポートし、理解を深めてくれる書籍・参考書を三冊紹介したいと思いま[…]