<H26年度(2014年)問15 > 三相同期電動機のトルクと誘導起電力を求める計算問題(解説あり)

問題

周波数が60Hzの電源で駆動されている4極の三相同期電動機(星形結線)があり、端子の相電圧V[V]は$\frac{400}{\sqrt{3}}V$、電機子電流$I_{M}[A]$は200A、力率1で運転している。1相の同期リアクタンス$x_{s}[Ω]$は1.00Ωであり、電機子の巻線抵抗、及び機械損などの損失は無視できるものとして、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a)上記の同期電動機のトルクの値[N・m]として最も近いものを、次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)12.3 (2)368(3)735(4)1270 (5)1470

(b)上記の同期電動機の端子電圧及び出力を一定にしたまま界磁電流を増やしたところ、電機子電流が$I_{M1}[A]$に変化し、力率$cosθ$が$\frac{\sqrt{3}}{2}(θ=30°)$の進み負荷となった。出力が一定なので入力電力は変わらない。図はこのときの状態を説明するための1相の概略のベクトル図である。このときの1相の誘導起電力E[V]として、最も近いEの値を次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)374 (2)387 (3)400(4)446 (5)475

解答を見る
(a)・・・(3)
(b)・・・(3)

前提知識

①電動機出力$P[W]$を求める式。

$$P=\frac{3VE}{x_{s}}sinδ[W]$$
ただし、$V[V]$は電動機端子電圧(相)、$E[V]$は電動機誘導起電力(相)。

②回転子回転角速度$ω[rad/s]$を求める式。

$$\begin{align}ω&=\frac{2πN}{60}\\&=\frac{2π}{60}×\frac{120f}{p}[rad/s]\end{align}$$

③電動機のトルク$T[N・m]$を求める式。

$$T=\frac{P}{ω}[N・m]$$

解説

(a)

まず電動機出力$P[W]$を求めるために、電動機の誘導起電力$E[V]$を求めましょう。題意からベクトル図を書いてみると<画像1>のようになります。

画像1

このベクトル図から立式すると、$$\dot{V}=\dot{E}+jx_{s}\dot{I}_{M}$$

となります。力率1で運転しているので、端子電圧$V$と電機子電流$I_{M}$が同相になります。ということで、端子電圧$\dot{V}$を基準としてベクトル図を描くと<画像2>のようになります。

画像2
ベクトル図の書き方』及び『電動機出力の公式の導出』は下の記事で詳細に説明していますので、ベクトル図に不安のある方は是非ご覧ください。
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<画像2>のベクトル図より、

$$\begin{align}E&=\sqrt{V^{2}+(x_{s}I_{M})^{2}}\\&=\sqrt{(\frac{400}{\sqrt{3}})^{2}+(1.00×200)^{2}}\\&=305.5[V]\end{align}$$

『前提知識①』より、電動機出力$P[W]$を求めると、

$$\begin{align}P&=\frac{3×\frac{400}{\sqrt{3}}×305.5}{1.00}×\frac{1.00×200}{305.5}\\&=138560[W]・・・①\end{align}$$

『前提知識②』より、回転角速度$ω[rad/s]$を求めると、

$$\begin{align}ω&=\frac{2π}{60}×\frac{120×60}{4}\\&=188.5[rad/s]・・・②\end{align}$$

①式、②式を『前提知識③』に代入すると、トルク$T[N・m]$は、

$$\begin{align}T&=\frac{138560}{188.5}\\&≒735[W]\end{align}$$

よって(a)の答えは(3)となります。

(b)

ここで問題のベクトル図を再掲します。

ベクトル図 再掲

当問題はベクトル図中の$\dot{E}$の大きさを求めよ。という問題になります。まずは$\dot{I}_{M1}$の大きさを求めてあげましょう。

$$cos30°=\frac{\sqrt{3}}{2}$$より、

$$\frac{I_{M}}{I_{M1}}=\frac{\sqrt{3}}{2}$$

$$\begin{align}I_{M1}&=\frac{200}{\frac{\sqrt{3}}{2}}\\&=230.9[A]\end{align}$$

ここで、ベクトル図に補助を加えると<画像3>のようになります。

画像3

三平方の定理を用いると、次のような立式が出来ます。

$$E=\sqrt{(V+x_{s}I_{M1}sin30°)^{2}+(x_{s}I_{M1}cos30°)^{2}}$$

この式に数値を代入すると、

$$\begin{align}E&=\sqrt{(\frac{400}{\sqrt{3}}+1.00×230.9×\frac{1}{2})^{2}+(1.00×230.9×\frac{\sqrt{3}}{2})^{2}}\\&≒400[V]\end{align}$$

よって(b)の答えは(3)となります。

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