【重要】同期電動機・同期発電機の等価回路とベクトル図の書き方を丁寧に解説【電験】

同期電動機の等価回路

まず同期電動機の等価回路図を<画像1>に示します。

画像1

ここから一つ一つ丁寧に説明していきます。端子電圧$\dot{V}$は電源の事です。電動機を回すので、電源に接続しなくてはいけません。$R_{a}とjX_{s}$はそれぞれ、電機子巻線抵抗と電機子同期リアクタンスになります。これは、固定子の抵抗とリアクタンスです。これらをまとめて電機子巻線インピーダンス$\dot{Z}$と言ったりします。$$\dot{Z}=R_{a}+jX_{s}$$この回路図で等式をつくると、$$\begin{align}\dot{V}&=\dot{Z}\dot{I}+\dot{E}\\& =\left( Ra+jX_{s}\right)\dot{ I}+\dot{E}・・・①\end{align}$$となります。この式を基にしてベクトル図を書いていきます。

同期電動機のベクトル図の書き方

ベクトル図を書く際の順番は次の通りに行います。

  1. 回路図より、式を立てる。(できれば完成図をイメージする)
  2. 基準となるものを決める。
  3. 式に従って、ベクトルを足していく。又は引いていく。

では順にやってみましょう。

①回路図より式を立てる

これは先ほど求めた、$$\dot{V} =( R_{a}+jX_{s})\dot{ I}+\dot{E}・・・①$$この式を用います。この時に$\dot{E}$の先端からベクトルが足されていって$\dot{V}$となるイメージを持つと分かりやすいかと思います。または、少し式変形すると、$$\dot{V}-R_{a}\dot{ I}-jX_{s}\dot{ I}=\dot{E}$$となるので、$\dot{V}$の先端からベクトルが引かれていって、$\dot{E}$となるイメージでも構いません。今回の場合、始めに$\dot{V}$を基準に書くので$\dot{V}$の先端を起点にして逆算していくイメージです。

②基準となるものを決める。

ベクトル図を書くときは基準を決めてそこから書いていきます。今回の「同期電動機」の場合、端子電圧を基準とします。したがって、$$\dot{V}=V∠0°$$となります。

画像2

➂電機子電流ベクトルを書く。

この場合の力率をcosθ(遅れ)としましょう。これは端子電圧と電機子電流の位相差がθであることを意味します。逆起電力$\dot{E}$と電機子電流の位相差ではないので注意してください。では電機子電流を原点から書いてみましょう。遅れなので$\dot{V}$より下側に来ます。

画像3

④「電機子電流×抵抗又はリアクタンス」⇒電圧降下を書く。

ここで電気基礎の確認ですが、「抵抗にかかる電圧」と「そこを流れる電流(=電機子電流)」は同相(同じ角度)になるのでした。そして、「リアクタンスにかかる電圧」と「そこを流れる電流(=電機子電流)」は90°の位相差があります。つまり、” 電機子電流$\dot{I}$  ”と” 電機子巻線抵抗にかかる電圧$R_{a}\dot{I}$ ”は同相(同じ角度)になります。そして、” 電機子電流$\dot{I}$ ”は” 電機子巻線リアクタンスにかかる電圧$jX_{s}\dot{I}$ ”より90°遅れます。これをベクトル図に書きましょう。

画像4

⑤終点と原点を結ぶ

最後に原点と終点を結べば、それが逆起電力$\dot{E}$になります。

画像5

最後に誘導起電力と端子電圧の間に$δ$(デルタ)が出現しましたが、これは「相差角」または「負荷角」と言います。同期電動機のベクトル図の書き方関しては以上になります。同期発電機も流れは同じになりますが、もう一度順に書いていきたいと思います。

同期発電機の等価回路

同期発電機の等価回路は<画像6>のようになります。

画像6

まず、この回路図より式を立てましょう。すると、$$\dot{E}-(R_{a}+jX_{s})\dot{I}=\dot{V}$$になりました。今回も端子電圧$\dot{V}$を基準にして、$\dot{E}$を求めることをゴールにしますので、$\dot{E}=$の形に直してみましょう。結果、$$\dot{E}=\dot{V}+R_{a}\dot{I}+jX_{s}\dot{I}$$となりました。この式より、$\dot{V}$からベクトルを足していって、$\dot{E}$とするイメージを持てると良いと思います。

同期発電機のベクトル図

書き方は基本的に電動機と同じようになりますが一つ一つ丁寧に書いていきます。

①回路図から式を立てる

今回も先ほど導いた式を用います。$$\dot{E}=\dot{V}+R_{a}\dot{I}+jX_{s}\dot{I}$$となりました。これを基にベクトル図を書いていきます。

②端子電圧Vを基準にする。

画像7

➂電機子電流のベクトルを書く。

今回も力率は$cosθ$(遅れ)とします。力率は端子電圧を電機子電流の位相差になります。

画像8

④電圧降下分を書く。

今回は発電機ですので、誘導起電力$\dot{E}$は電圧降下と端子電圧$\dot{V}$のベクトル和となりますので、$\dot{V}$からベクトルが伸びていく感じになります。

画像9

⑤原点と結ぶ。

画像10

以上が同期電動機・発電機のベクトル図の書き方になります。では次に同期機における重要公式の導出を見ていきましょう。

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同期機を学習していると、出力の公式$$P=3\frac{VE}{X_{s}}sinδ$$が頻出します。ここからはこの公式を同期発電機の等価回路とベクトル図から導出してみます。

この公式は<画像11>のように、電機子抵抗が無視できる場合に用いられます。

画像11

この回路図より、一相分の出力$P_{1}$を求めると、$$P_{1}=VIcosθ$$となります。これを三相分にすると、$$P=3VIcosθ・・・①$$となります。

では皆さんこの回路図から自身でベクトル図を書いてみてください。

<画像11>のベクトル図の答え
$$\dot{E}=\dot{V}+jX_{s}\dot{I}$$となり、ベクトル図は、

画像12

となります。

ここから、$$Esinδ=X_{s}Icosθ$$が導かれ、$$Icosθ=\frac{E}{X_{s}}sinδ・・・②$$となります。

②式を①式に代入すると、$$P=3\frac{VE}{X_{s}}sinδ[W]・・・③$$が導出されます。(※注意:$V$と$E$は相電圧です)

$V$と$E$を線間電圧$V_{l}$,$E_{l}$を用いて表すとすると、$$V=\frac{V_{l}}{\sqrt{3}}    ,    E=\frac{E_{l}}{\sqrt{3}}$$となります。これを➂式に代入すると、$$\begin{align}P=3\frac{\frac{V_{l}}{\sqrt{3}}\frac{E_{l}}{\sqrt{3}}}{X_{s}}sinδ=\frac{V_{l}E_{l}}{X_{s}}sinδ[W]\end{align}$$

この式は本当によく用いられますので覚えておくといいかと思います。また、二種二次試験ではこの導出過程を問う問題もありましたので、導出過程も理解しておくといいかと思います。

以上が同期機のベクトル図の書き方になります。では実践問題を解いてみましょう。

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