<H24年度(2012年)問16>  三相同期電動機の内部誘導起電力と負荷角を求める計算問題(解説あり)

問題

三相同期電動機が定格電圧$3.3[kV]$で運転している。
ただし、三相同期電動機は星形結線で1相当たりの同期リアクタンスは$10[Ω]$であり、電機子抵抗、損失及び磁気飽和は無視できるものとする。
次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a)負荷電流(電機子電流)$110[A]$、力率$cosφ=1$で運転しているときの1相あたりの内部誘導起電力[V]の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)1100 (2)1600 (3)1900 (4)2200 (5)3300


(b)上記(a)の場合と電圧及び出力は同一で、界磁電流を$1.5$倍に増加したときの負荷角(電動機端子電圧と内部誘導起電力との位相差)を$δ^{´}$とするとき、$sinδ^{´}$の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)0.250 (2)0.333 (3)0.500 (4)0.707 (5)0.866

解答を見る
(a)・・・(4)
(b)・・・(2)

前提知識

①同期電動機の1相分等価回路

画像1

②同期電動機のベクトル図

<画像1>を基にベクトル図を描くと<画像2>のようになります。

画像2

ベクトル図の書き方を丁寧に解説した記事がありますので、不安な方は是非ご覧ください。

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③同期電動機の出力を求める式。

$$P=\frac{3EV}{X_{s}}sinδ[W]$$
ただし、$E[V]$は誘導起電力(相)、$V[V]$は端子電圧(相)。この式の導出は下の記事で紹介しています。是非ご覧下さい。
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解説

(a)

問題文から1相分等価回路<画像3>を書きましょう。電圧が線間なのか相なのか確認しながら書いていきます。

画像3

等価回路から立式すると次のようになります。

$$\dot{V}=\dot{E}+jX_{s}\dot{I}$$

問題文より、『力率が1』なので、端子電圧$V$と電流$I$が同相となります。したがって、端子電圧$\dot{V}$を基準にベクトル図を書くと次のようになります。<画像4>

画像4

<画像4>のベクトル図より、三平方の定理を用いると、

$$E=\sqrt{V^{2}+(X_{s}I)^{2}}$$

となります。ここに各数値を代入すると、

$$\begin{align}E&=\sqrt{(\frac{3300}{\sqrt{3}})^{2}+(10×110)^{2}}\\&≒2200[V]\end{align}$$

よって(a)の答えは(4)となります。

※補足
当問題は同期電動機であるにも関わらず『誘導起電力>端子電圧』という、初見では「?」と疑問に思ってしまうような解答が得られます。しかし、問題文から論理的に式を組み立てベクトル図を書いて得られた結果を信じてください。直感に反するものを受け入れる力も身につけましょう。また、『ベクトル図の書き方』を一から丁寧に解説した記事もありますので、ベクトル図に不安のある方は是非ご覧ください。
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(b))

『前提知識③』より、同期電動機の出力$P[W]$の値は、

$$P=\frac{3VE}{X_{s}}sinδ[W](V,Eは相電圧)$$で表されます。

まず、(a)の状態での出力を求めましょう。

$$\begin{align}P&=\frac{3×\frac{3300}{\sqrt{3}}×2200}{10}×\frac{10×110}{2200}\\&=628.7[kW]・・・①\end{align}$$

題意より、界磁電流が元の1.5倍なので、界磁電流変化後の誘導起電力$E’$も1.5倍となります。

したがって界磁電流変化後の出力$P’$は、

$$\begin{align}P’&=\frac{3×\frac{3300}{\sqrt{3}}×2200×1.5}{10}×sinδ’\\&=1886sinδ[kW]’\end{align}・・・②$$

題意より、出力は界磁電流変化前後で等しいので、①=②より、

$$1886sinδ’=628.7$$

$$\begin{align}sinδ’&=0.3333\\&≒0.333\end{align}$$

よって答えは(2)となります。

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