<R元年度(2019年)問15>三相同期発電機の力率に関する計算問題(解説あり)

問題

並行運転しているA及びBの2台の三相同期発電機がある。それぞれの発電機の負荷分担が同じ7300kWであり、端子電圧が6600Vのとき、三相同期発電機Aの負荷電流IAが1000A、三相同期発電機Bの負荷電流IBが800Aであった。損失は無視できるものとして、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a)三相同期発電機Aの力率の値[%]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)48 (2)64 (3)67 (4)77 (5)80


(b)2台の発電機の合計の負荷が調整の前後で変わらずに一定に保たれているものとして、この状態から三相同期発電機A及びBの励磁及び駆動機の出力を調整し、三相同期発電機Aの負荷電流は調整前と同じ1000Aとし、力率は100%とした。このときの三相同期発電機Bの力率の値[%]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし、端子電圧は変わらないものとする。

(1)22 (2)50 (3)71 (4)87 (5)100

解答を見る
(a)・・・(2)
(b)・・・(1)

解説

前提知識

三相同期発電機の出力P[W]は、端子電圧(線間)をV[V]、線電流をI[A]、力率をcosθとすると、

P=3VIcosθ[W]

と表されます。

 

力率は、以下の画像において、

cosθ=PSで求まります。

解説

(a)問題

題意より、発電機Aの出力PA=7300[kW]、端子電圧(線間)V=6600[V]、A機に流れる電流IA[A]=1000[A]であるので、

『前提知識』における三相同期発電機の出力の式より、

PA=3VIAcosθA[W]

cosθA=PA3VIA=7300×1033×6600×1000=0.6380.64

 

これを百分率に直すと、

64[%]

よって(a)の答えは(2)となります。

(b)

三相同期発電機A及びBの励磁及び駆動機の出力を調整した際のBの力率cosθBを求める問題です。

まずは下準備として、元の状態の発電機Bの力率cosθB、元の状態の負荷の有効電力PL、元の状態の負荷の無効電力QLを求めます。

 

元の状態の発電機Bの力率cosθBは、

PB=3VIBcosθBより、

cosθB=PB3VIB=7300×1033×6600×800=0.7980.8

 

元の状態の負荷の有効電力PLは、題意より『2台の発電機の合計の負荷が調整の前後で変わらずに一定に保たれているものとして』とあるので、(a)問題の条件より、

PL=PA+PB=7300+7300=14600[kW]

 

元の負荷の無効電力出力QLは、

QL=PAcosθA×sinθA+PBcosθB×sinθB=7300×1030.64×10.642+7300×1030.8×10.82=8764276+5475000=14239276[var]14239[kvar]

 

題意より、負荷の変化がないとあるので、PLQLは変化しないものとなります。

 

三相同期発電機Aの変化後の出力PAは、

PA=3VIAcosθA=3×6600×1000×111432[kW]

 

元の状態の負荷の有効電力PLと、変化後の発電機Aの有効電力PAより、変化後の発電機Bの出力PBは、

PB=PLPA=1460011432=3168[kW]

 

無効電力に関しては、元の状態の負荷の無効電力QLが変化しないことと、発電機Aの状態変化後の力率が1であるので、無効電力QA=0であることを利用すると、

QA+QB=QL

QB=14239[kvar]

 

ここまでで、状態変化後の発電機Bの有効電力PBと、無効電力QBが求まりました。

画像1

『前提知識』より、変化後の発電機Bの力率cosθBは、

cosθB=PBPB2+QB2=316831682+142392=0.2170.22

0.2222[%]

 

よって(b)の答えは(1)となります。

同期機関連記事&オススメの書籍紹介

関連記事

関連記事

[adcode] 短絡比とは? 短絡比Kは以下の式で定義されます。 $$短絡比K=\frac{無負荷飽和曲線(開放時)で定格電圧が発生するときの界磁電流I_{f1}}{短絡曲線(短絡時)で定格電流が流れる時の界磁電流I_{f2}}[…]

関連記事

[adcode] 電機子反作用とは? 電機子反作用とは、 界磁電流が作る磁束に、電機子巻線の作る磁束が合成され磁束の歪みが生じる事 を言います。 文章ですぐに理解できる方は中々いないかと思いますので「同期発電機の原理」から説明して[…]

モータ技術のすべてがわかる本

こちらの本は本章で取り扱った同期モータのみならず、誘導モータ・直流モータに関しても非常に分かりやすく詳細に書いてあります。また、この本の最大の特徴ともいえるのが、フルカラーという点です。フルカラーイラストをふんだんに用いていますので、機械科目において重要な「脳内でのイメージ材料」を鮮明に手に入れることが出来るでしょう。

表紙にも記載のある通り、まさに、「モータのことはこれ1冊でOK」な本となっています。

最新モータ技術のすべてがわかる本 史上最強カラー図解 オールカラー [ 赤津観 ]
created by Rinker
¥1,980 (2025/07/23 16:03:00時点 楽天市場調べ-詳細)

管理人が選ぶオススメ書籍3選

関連記事

こちらの記事の書籍評価は完全主観に基づいたものです。あくまでも参考程度にご覧ください。   こんにちは!NORIです! 今回は電験機械科目の学習をサポートし、理解を深めてくれる書籍・参考書を三冊紹介したいと思いま[…]

 

 

電気系の情報発信をしています。