【同期機】同期電動機・同期発電機の基礎・構造①

同期機とは?

同期機とは、

「定常状態において、回転子が回転磁界の回転速度と同期して回転するもの」

になります。同期機は交流機の一種になりますが、交流機で有名なものに「誘導機」があります。「誘導機と同期機の違いってなんだろう」と思われる方も多いと思います。そこで今回は、誘導機と同期機の違いから始まり、同期電動機、同期発電機、そして少し派生させて同期調相機まで解説していきます。同期機と誘導機は、構造が似ている部分が多いので合わせて学ぶとよいと思います。

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同期電動機と誘導電動機の違い

まずは構造に関して、同期電動機と誘導電動機の大きな違いを説明します。

回転子の違い

一般的な誘導電動機の回転子は「かご形回転子」といい、導体バーの両端を端絡環で結合した<画像1>のようなものとなっています。

画像1

言ってしまえば、ただ導体がそこにあるだけの、非常にシンプルで保守点検の容易なものです。

回転メカニズムは以下のようになります。

回転子を回転磁界が横切ることにより、誘導起電力・誘導電流が発生。その誘導電流と回転磁界により電磁力(回転トルク)が生じ回転する。
 
 
NORI
誘導電動機は”滑り”という概念が重要キーワードです。
頭の中で動作がイメージできるとgood!YouTubeの活用もオススメです。

その一方で、同期電動機は誘導電動機とは異なり、回転子が磁石(永久磁石or電磁石)となっており、回転子のN極・S極と回転磁界との吸引力・反発力を利用し回転するものになります。誘導機に比べて幾分イメージしやすいかと思います。

滑りとは?

滑りとは、

同期速度(回転磁界の回転速度)$N_{s}[min^{-1}]$と回転子の回転速度$N[min^{-1}]$の差を同期速度で割ったもの

になります。数式で表すと、

$$s=\frac{N_{s}-N}{N_{s}}$$

となります。

回転速度を求める式の違い

誘導電動機

誘導電動機の回転メカニズムからも分かるように、回転磁界の回転速度$N_{s}$と回転子の回転速度$N$が等しくなった時、回転磁界は回転子を切りませんので、発生トルクは0となります。

誘導電動機の回転子の回転速度$N$は、電源周波数を$f[Hz]$、極数を$p$、滑りを$s$とすると、

$$N=\frac{120f}{p}(1-s)[min^{-1}]$$

となり、回転磁界の回転速度よりも少し遅れて回ります。

同期電動機

一方の同期電動機の回転メカニズムは誘導機と違い、磁石である回転子と固定子が発する回転磁界との「吸引力・反発力」によって回転します。したがって滑りが生じません。

ということは、同期電動機の回転子の回転速度$N$は同期速度と同じ、

$$N=N_{s}=\frac{120f}{p}[min^{-1}]$$

となります。

これが同期電動機と誘導電動機の大きな違いかと思います。

同期電動機の構造の概要

ではここからは同期電動機の構造の詳細に入っていきます。

固定子の構造

固定子の役割は、回転磁界を発生させることにあります。回転磁界の発生原理は以下のリンクにて解説しています。1から説明すると非常に長くなりますのでここでは割愛しますが、交流機を理解するには回転磁界の理解は欠かせません。ぜひ確認してから戻ってきてください。リンク先(目次:1.1.1)にあります。

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固定子は主に次の要素からなっています。(画像2)

  • 固定子枠
  • 固定子鉄心
  • 固定子巻線
画像2
 

固定子枠

<画像2>を見ると固定子枠にひだひだが付いているのが見て取れるかと思います。これは表面積を大きくして放熱しやすくするためのものです。ヒートシンクというと分かりやすいかと思います。

固定子鉄心

固定子鉄心にはケイ素鋼板を積層した積層鉄心が用いられています。積層鉄心というのは、薄い板を1枚1枚絶縁したものを、何枚も重ねたもの、とイメージするとわかりやすいと思います。なぜ絶縁したものを積層するかというと、「渦電流損」を軽減できるからです。渦電流は”ジュール損”を発生し、損失を大きくします。<画像3>参照。

画像3

<画像3>を見ていただくと、「積層方向(上向き)と垂直に磁束(赤→)が貫いたとき」、渦電流損を低減できます。

 
モートルちゃん
どの方向を貫いたときに損失を軽減できるか。
過去問で見たことあるかも,,,!!

固定子巻線

固定子巻線には三相交流電流が流れ、回転磁界を発生させます。先ほどのリンクに詳細が載っていますので是非ご覧ください。

回転子の構造と回転

冒頭で書きました通り、誘導電動機と同期電動機の違いは回転子にあります。誘導電動機の場合、回転子には「かご形」や「巻線形」がありますが、これらはいわば、ただ導体が存在しているだけのものと言うことが出来ます。

一方で同期電動機の場合、回転子に「電磁石」や「永久磁石」を用いて、回転子から磁場を発生させています。後ほど説明しますが、回転子に電磁石を用いた場合、鉄心に施した界磁巻線に流す電流の大きさを変化させることで、特性を変化させることが出来ます。

<画像4>に示す通り、$N$と$S$には”吸引力”が働き、$N$と$N$、または$S$と$S$には”反発力”が働きます。この吸引力と反発力を利用して回転するのが、同期電動機というわけです。(<画像4>中の電動機の周囲を回っている磁極は、回転磁界を磁極で表現したものになります。)

画像4

<画像4>は”無負荷”の状態を表現していますが、では、負荷が掛かるとどうなるのか見てみましょう。

同期電動機に負荷がかかる(=回転子に負荷がかかる)と回転が少しだけ遅れます。その状態が下の<画像5>となります。

画像5

画像にあるように、回転子がどれくらい遅れているのかというのを「負荷角」と言います。同期電動機はこの負荷角が0になる様なトルクが働きます。

電磁石・永久磁石、それぞれのメリットデメリットとは?

では電磁石を用いた回転子と永久磁石を用いた回転子において、それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。

”電磁石”を用いた回転子

メリット

・界磁電流を変化させることで、力率を調整することが可能。
・容量を大きくすることができる。

デメリット

・二次銅損、励磁損が発生する。
・界磁のための装置が必要であり、高価である。

”永久磁石”を用いた回転子

メリット

・界磁電流を流す必要がないので、二次銅損、励磁損がなく高効率である。
・整流子、ブラシ、スリップリングなどが不要であり、保守が容易である。

デメリット

・電磁石を用いた場合と異なり、力率調整が出来ない。

 

以上が主なメリット・デメリットかと思われます。
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同期調相機とは

同期調相機というのは、電磁石を用いた同期電動機のメリットの1つでもある「力率調節」を利用したもので、”無負荷で使用する電磁石式の同期電動機”の事を言います。

V曲線

では、どうすれば力率調節できるのかというと「界磁電流(回転子を電磁石にする電流)の調整」によって可能となります。ここで、「V曲線」と言われるものを見てみましょう。↓<画像6>参照

画像6

 

グラフをみれば「V結線」が”V”と言われる理由が分かると思います。
横軸に界磁電流(回転子を電磁石にする電流)、縦軸に電機子電流(固定子巻線に流れる電流:負荷電流)を取ります。負荷が大きくなっていくほど、曲線は上に遷移していきます。一番下のまっすぐなものが無負荷時になります。この一番下のところを利用したのが「同期調相機」ということになります。
そして、各曲線の電機子電流が一番小さいところが「力率1」になります。
次の画像を見てください。↓<画像6>参照
画像7

注意して頂きたいのは、これは「同期電動機」であるということです。同期発電機の場合「進み・遅れ」は逆になるので注意してください力率1を境に、界磁電流を大きくすると「進み」に、小さくすると「遅れ」になります。

この場合の進み遅れは、「電動機に流れ込んでくる」ということです。

少しまとめてみます。

同期電動機の界磁電流を、力率1を境に
①大きくすると、進み電流が流れ込む。⇒”コンデンサ”の役割と同じ
②小さくすると、遅れ電流が流れ込む。⇒”リアクトル”の役割と同じ

同期調相機の特徴

同期調相機は「電力科目」の力率調整の分野でよく出てきますので、特徴を書いておきます。
・遅れから進みまで連続的に調整できる。
・回転部があり、損失が大きい。
・保守、メンテナンスが大変。

同期発電機

同期発電機は、回転子(電磁石or永久磁石)に回転力を与えて固定子に電圧を誘起する(=発電)といったものになります。誘導発電機よりもシンプルですのでわかりやすいかと思いますが、イラストを描いておきます。↓<画像8>参照

画像8

<画像8>中の右の図を見てください。

右の図は左の図の一部を切り取ったものになります。ここではフレミングの右手の法則を用いますので、分からない方は下記にリンクを貼っておきます。ぜひご覧ください。

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まず磁界の向き(人差し指)はというと、N極から出ますので「上向き」になります。次に導体の動く向き(親指の向き)はというと、回転子(磁石)の動く向きは右ですので、これは「回転子を固定し、導体がに動く」ことと等価になります。これで導体には「手前から奥向き」に電流が流れることが分かりました。

このような具合で発電します。

誘導発電機との違い

誘導機が発電状態となるのは、「回転子が回転磁界よりも速くなった時」です。

前述したように、誘導機の回転子はただの導体です。

ここで、誘導機の固定子に三相電源が接続されていない状態で、外部から回転力を与えて回転子を回すことを想像してみましょう。何が起こりますか?

 
モートルちゃん
固定子に電源印加せずに、回転子を回転させる?
なにも起こらないんじゃ,,,,

そうです。何も起こりません。回転子がただただ回っている空虚な状況がそこに存在します。

つまり誘導発電機は以下のようなメカニズムで発電するのです。

①固定子に三相電源を接続し、回転磁界を生じさせる。
②固定子が回転磁界の速度(同期速度)以上になる。

この2ステップがあって初めて誘導機は発電状態になります。

一方で同期発電機はどうでしょうか?固定子に三相電源が接続されていなく、回転磁界が生じていなくとも、回転子がすでに磁石なのです。つまり磁石を回してあげれば、発電状態になります。

これを少し難しく言うと誘導発電機は、系統からの励磁電流が必要であるが、同期発電機は不要という言い回しになります。

電験ではこのことを問われたこともありましたので、抑えておいた方がよいでしょう。

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