問題
一般的な三相かご形誘導電動機がある。
出力が大きい定格運転条件では、誘導機の等価回路の電流は、「二次電流≫励磁電流」であるから、励磁回路を省略しても特性をほぼ表現できる。さらに、「二次抵抗による電圧降下≫その他の電圧降下」となるので、一次抵抗と漏れリアクタンスを省略しても、おおよその特性を検討できる。
このような電動機でトルク一定負荷の場合に、電流$100[A]$の定格運転から電源電圧と周波数を共に$10\%$下げて回転速度を少し下げた。このときの電動機の電流の値$[A]$として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)80 (2)90 (3)100 (4)110 (5)120
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- (3)
前提知識
①誘導電動機の1相分等価回路
②誘導電動機の出力、回転角速度、トルクの関係式
ただし、$ω[rad/s]$は回転子の回転角速度、$T[N・m]$はトルク。
解説
問題文より、励磁回路と一次抵抗、漏れリアクタンスを省略してもおおよその特性を検討できると書いてあるので、『前提知識①』の等価回路を簡略化してみましょう。
トルク$T$を求める式を書いてみると、
$$T=\frac{P_{o}}{ω}・・・①$$
出力$P_{o}$を求める式を書くと、
$$\begin{align}P_{o}&=3×\frac{1-s}{s}×r_{2}’×I^{2}\\&=3×\frac{1-s}{s}×r_{2}’×I×\frac{V_{1}}{\frac{r_{2}’}{s}}\\&=3×(1-s)×I×V_{1}[W]・・・②\end{align}$$
回転角速度$ω[rad/s]$を求める式を書くと、
$$\begin{align}ω&=\frac{2π}{60}×\frac{120f}{p}(1-s)\\&=\frac{4πf}{p}(1-s)[rad/s]・・・③\end{align}$$
①に②、③を代入すると、
$$\begin{align}T&=\frac{3×(1-s)×I×V_{1}}{\frac{4πf}{p}(1-s)}\\&=\frac{p}{4πf}×3IV_{1}[N・m]\end{align}$$
電流$I$を求める式に変形すると、
$$I=\frac{4πfT}{3pV_{1}}$$
この式を見ると、題意よりトルクが一定なので、変数は周波数$f$と電源電圧$V_{1}$のみとなり、題意のように$f$と$V_{1}$を同じ割合減少させてもトルクは一定となります。つまり電流は変化なしの100[A]となります。
よって答えは(3)となります。
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