皆さんこんにちは!NORIです!
前回は「変圧器の基礎・構造②~一次・二次換算とT型・L型等価回路~」ということで、変圧器の等価回路に関する内容に関して記事を書きました。ぜひご覧ください。↓こちらです。
皆さんこんにちは!NORIです! 前回は変圧器の基礎・構造①ということで、変圧器の系統での役割・変圧の仕組み・変圧比αの導出を行いました。ぜひご覧ください。↓こちら [sitecard subtitle=関連記事 url=htt[…]
今回は「変圧器に生じる損失」について書いていきたいと思います。
それでは行きましょう!
変圧器に生じる損失の分類
変圧器に生じる損失は大きく分けると
- 負荷損
- 無負荷損
の二つに分類することが出来ます。これらは、「変圧器に負荷電流が流れることにより生じるもの」が負荷損であり、「一つの巻線に定格周波数の定格電圧を加え、ほかの巻線をすべて開路としたときの損失」が無負荷損になります。
そして、さらにこの二つはさらに分解すると以下のようになります。
負荷損の分類
無負荷損の分類
といった具合に分類できます。正確にはまだ分岐できるのですが、電験で用いられるのはこのあたりかと思いますので、混乱を避けるために省略しました。この画像中の分類は覚えましょう。
ではそれぞれの損失の名称が知れたところで、その概要に入っていきましょう。
まずは負荷損からです。
負荷損
負荷損は変圧器に負荷電流が流れることにより発生する損失になります。
銅損($P_{c}$)
銅損($P_{c})$は、変圧器の巻線抵抗による損失になります。
前回の記事(↓参照)では等価回路について学習しましたので、そこで得た等価回路を用いて各種損失を求める式を導いていきましょう。
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<画像3>のL型等価回路は三相変圧器の一相分を表しているものとします。
負荷損は変圧器の巻線抵抗による損失でしたので、この場合$r_{1}$による損失と$r_{2}^{‘}$による損失がそれに該当します。
したがって三相変圧器に生じる銅損は
になります。ここで注意してほしいのが係数の3を忘れてしまうことです。単相変圧器であれば一相分の銅損でいいので、3はいりませんが三相では必ず一相分を三倍しましょう。
この「係数忘れ」で痛い目に合う方がたくさんいらっしゃるので、何度も言います。
これだけデカく書いたので、多分大丈夫でしょう(笑)
漂遊負荷損
漂遊負荷損は、巻線その他金属部分への漏れ磁束による損失になります。↓参照<画像4>
この漂遊負荷損は他の損失に比べて、非常に小さい値となりますので、無視されることが多いです。
無負荷損(鉄損)
無負荷損は、「一つの巻線に定格周波数の定格電圧を加え、ほかの巻線をすべて開路としたときの損失」なのでした。つまり、変圧器に負荷が接続されていようがされていなかろうが、印加電圧・周波数が変化しない限り必ず一定の値を持ちます。
負荷電流に無関係で、変圧器鉄心を励磁する際に発生する損失です。
渦電流損($P_{e}$)
渦電流損は変圧器鉄心に磁束が流れ、変化することにより生じる渦電流による損失になります。
この渦電流損は、変圧器鉄心を「薄鋼板を重ね合わせた、成層鉄心」を用いることで軽減することが出来ます。
何故薄鋼板を用いるのか?というと、「渦電流損は鋼板の厚さの二乗に比例する」からです。つまり鋼板の厚みによって渦電流損の大きさは大きく変化するということです。結果一枚一枚絶縁した薄い鋼板(薄鋼板)を用いることで、渦電流損は軽減することが出来ます。
渦電流損に関する比例関係式
渦電流損は、周波数$f$・最大磁束密度$B_{m}$に対して以下のような比例関係があります。
また、$$B_{m}∝\frac{V}{f}$$という関係があるので、
ヒステリシス損($P_{h}$)
ヒステリシス損は、「鉄心内の磁束の大きさ・向きが変化し、鉄心内の磁気分子の方向・配列が変化することによる摩擦損失」の事を言います。
うん。。分かりにくい(´;ω;`)
なるべくかみ砕いて説明していきます。
覚えること
ヒステリシス曲線上の各点の名称を<画像7>に示しました。この各点の名称は必ず覚えてください。
- 残留磁気$B_{r}$・・・強磁性体を磁界中に置くと、強磁性体は磁化する。この時、外部の磁界を取り除いたときに、磁性体内部に残る磁束密度を言う。
- 保持力$H_{c}$・・・残留磁気の点から逆向きに磁界をかけたときに、磁性体内部の磁束密度が0になる磁界の強さ。
- 飽和磁束密度(最大磁束密度)$B_{m}$・・・磁束密度の最大値。磁界の強さを強くしても、これ以上磁束密度は増加しない。
また、
ということも覚えておいてください。つまり、保持力や飽和磁束密度が大きいほどヒステリシス損は大きくなり、逆に保持力や飽和磁束密度が小さいほどヒステリシス損は小さくなります。
ヒステリシス曲線を追ってみる
まずヒステリシス曲線上の各点に番号を割り振ります。<画像8>
まずは①の点を見てみましょう。
強磁性体の中身は、「小さな磁石」で構成されていると考えてください。これらは正確に言うと「磁区」やら「磁気モーメント」やら、ちょっと難しくなるので、「小さな磁石」でいいでしょう(-_-;)。
(気になる方は検索してみてくださいね!そして分かっても分からなくてもここへ帰ってきてくださいw)
強磁性体に巻線を施し、交流を印加します。原点は印加しはじめであり、電流は0です。この時、強磁性体は磁化されていない。つまり磁石にはなっていない状態です。↓参照<画像9>
①→②では、電流が正の方向に流れ、電流による磁界が上向きに発生します(右ねじの法則)。それに伴って、強磁性体内部の小さな磁石は向きをそろえていきます。
最終的に、向きがMAXまで揃うと、電流によって作られる磁界が強くなろうが、強磁性体内部の磁束密度は増加しません。↓参照<画像10>
三相交流をイメージすると、電流が正の方向にMaxになったのち、正の方向のまま大きさが減少し、電流が0になる点が来ます。
この時、電流による磁界は0になります。が、強磁性体内部の小さな磁石は完全にバラバラの方向を向かず、全体としては「N・S」が出来ている状態になります。この時の磁束密度が残留磁気になります。
➂→④の時、磁界の強さが”負(電流が作る磁界は下向き)”になります。これは↓<画像12>中にもある通り、電流が反転した状態です。
電流が反転し、その大きさが増していくと、強磁性体中の磁束密度が①点と同じ0になります。この時の電流がつくる磁界の強さが”保持力”となります。↓<画像12>
この小さな磁石が向きを変えることによる摩擦による損失が”ヒステリシス損”になります。(正確に言うと”磁気分子の方向・配列の変化による分子相互間での摩擦”ですが、小さな磁石による摩擦でもイメージに差し支えないでしょう!)
ヒステリシス損に関する比例関係式
また、ヒステリシス損は周波数$f$と最大磁束密度$B_{m}$には次のような関係があります。
鉄損をL型等価回路より求める
鉄損を求める式は、<画像3>で用いたL型等価回路を三相変圧器の一相分等価回路とすると、次式になります。
ここでももう一度言いますが、相数を確認して係数を忘れないようにして下さい!
無負荷損(誘電体損)
誘電体損というのは、変圧器に用いられる絶縁材料に生じる損失になります。
そもそも絶縁体というのは電子が移動しにくい、つまり、電流が流れにくいものなわけです。この絶縁体を電界中に置くと、<画像13>のようになります。
<画像13>中にあるように、電子は原子に強く束縛されているので原子から離れることが出来ません。このプラスマイナスの対を”電気双極子”と言い、これらが生じることを誘電分極と言います。
”誘電”体損の意味が少しわかってきましたか?
<画像13>では直流電源を用い、一方向の電界を絶縁体に加えましたが、ここに交流電源を加えてみましょう。↓<画像14>
<画像14>のように、絶縁体に交番電界を加えると、電気双極子も、電界の方向の入れ替わりに追従してプラスマイナスが入れ替わります。この時、熱損失=誘電体損が発生します。
この誘電損失は、無負荷損の中でも非常に小さい値となりますので、無視されることが多いです。
~コラム(初)~ 各種損失の添え字
変圧器の損失を表す記号に用いられる添え字には意味があります。「$P_{i}$が鉄損?銅損?・$P_{c}$が鉄損?銅損?。どっちだっけ(´;ω;`)ウッ…」ってなりがちですが、これらは英単語の頭文字を取っています。参考程度にご覧ください!
- 鉄損$P_{i}$・・・Iron loss
- 銅損$P_{c}$・・・Copper loss
- 渦電流損$P_{e}$・・・Eddy Current loss
- ヒステリシス損$P_{h}$・・・Hysteresis loss
どうでしょうか?英単語も覚えられて一石二鳥ですね(^^♪
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また、こんなツイートも↓
『電動機について』
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参考文献
- 電気学会「電気工学ハンドブック 第7版」