問題
定格出力3300kV・A、定格電圧6600V、定格力率0.9(遅れ)の非突極形三相同期発電機があり、星形接続1相当たりの同期リアクタンスは12.0Ωである。電機子の巻線抵抗及び磁気回路の飽和は無視できるものとして、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)定格運転時における1相当たりの内部誘導起電力の値[V]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)3460(2)3810(3)6170(4)7090(5)8690
(b)上記の発電機の励磁を定格状態に保ったまま運転し、星形結線1相当たりのインピーダンスが13+j5Ωの平衡三相誘導性負荷を接続した。このときの発電機端子電圧の値[V]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)3810(2)4010(3)5990(4)6600(5)6950
- 解答を見る
- (a)・・・(3)
(b)・・・(5)
前提知識
①同期発電機の1相分等価回路。
②同期発電機のベクトル図(<画像1>の回路を用いる)。
ベクトル図の書き方を丁寧に解説した記事がありますので、不安な方は是非ご覧ください。
[adcode] 同期電動機の等価回路 まず同期電動機の等価回路図を<画像1>に示します。 [caption id="" align="aligncenter" width="450"] 画像1[/caption] ここから[…]
解答
(a)
問題文より、『電機子の巻線抵抗は無視できる』とあるので、同期発電機の1相分等価回路を書くと<画像3>のようになります。
<画像3>の1相分等価回路より立式すると、
$$\dot{E}=\dot{V}+jx_{s}\dot{I}$$
となります。$\dot{V}$を基準としてベクトル図を書くと<画像4>のようになります。
<画像4>のベクトル図より、『三平方の定理』を用いると、
$$E=\sqrt{(V+x_{s}Isinθ)^{2}+(x_{s}Icosθ)^{2}}・・・①$$
となります。ここで、電流$I[A]$を求めると、
$$\begin{align}I&=\frac{S_{n}}{\sqrt{3}V_{n}}\\&=\frac{3300×10^{3}}{\sqrt{3}×6600}\\&=288.7[A]\end{align}$$
となり、①式に数値を代入すると、
$$\begin{align}E&=\sqrt{(\frac{6600}{\sqrt{3}}+12.0×288.7×\sqrt{1-0.9^{2}})^{2}+(12.0×288.7×0.9)^{2}}\\&=6166\\&≒6170[V]\end{align}$$
よって(a)の答えは(3)となります。
(b)
題意より、『上記の発電機の励磁を定格状態に保ったまま運転し』とあるので、(a)で求めた誘導起電力は変化しません。この時の1相分等価回路を<画像5>に示します。
<画像5>の1相分等価回路より、回路を流れる電流$I$を求めると、
$$\begin{align}I&=\frac{E}{\sqrt{r^{2}+(x_{s}+x)^{2}}}\\&=\frac{6170}{\sqrt{13^{2}+(12+5)^{2}}}\\&=288.3[A]\end{align}$$
負荷インピーダンスの大きさ$z$は、
$$\begin{align}z&=\sqrt{13^{2}+5^{2}}\\&=13.93[Ω]\end{align}$$
よって、端子電圧(相電圧)$V’$は、
$$\begin{align}V’&=13.93×288.3\\&=4016[V]\end{align}$$
最後に端子電圧(線間)に変換すると、
$$\begin{align}V’_{l}&=4016×\sqrt{3}\\&=6955[V]\end{align}$$
よって最も近い(b)の答えは(5)となります。
同期機関連記事&オススメの書籍紹介
関連記事
[adcode] 短絡比とは? 短絡比$K$は以下の式で定義されます。 $$短絡比K=\frac{無負荷飽和曲線(開放時)で定格電圧が発生するときの界磁電流I_{f1}}{短絡曲線(短絡時)で定格電流が流れる時の界磁電流I_{f2}}[…]
[adcode] 電機子反作用とは? 電機子反作用とは、 界磁電流が作る磁束に、電機子巻線の作る磁束が合成され磁束の歪みが生じる事 を言います。 文章ですぐに理解できる方は中々いないかと思いますので「同期発電機の原理」から説明して[…]
モータ技術のすべてがわかる本
こちらの本は本章で取り扱った同期モータのみならず、誘導モータ・直流モータに関しても非常に分かりやすく詳細に書いてあります。また、この本の最大の特徴ともいえるのが、フルカラーという点です。フルカラーイラストをふんだんに用いていますので、機械科目において重要な「脳内でのイメージ材料」を鮮明に手に入れることが出来るでしょう。
表紙にも記載のある通り、まさに、「モータのことはこれ1冊でOK」な本となっています。
管理人が選ぶオススメ書籍3選
こちらの記事の書籍評価は完全主観に基づいたものです。あくまでも参考程度にご覧ください。 こんにちは!NORIです! 今回は電験機械科目の学習をサポートし、理解を深めてくれる書籍・参考書を三冊紹介したいと思いま[…]