問題
負荷に直結された他励直流電動機を、電機子電圧を変化させることによって速度制御することを考える。
電機子抵抗が$0.4[Ω]$、界磁磁束は界磁電流に比例するものとして、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)界磁電流を$I_{f1}[A]$とし、電動機が$600[min^{-1}]$で回転しているときの誘導起電力は$200[V]$であった。このときの電機子電流が$20[A]$一定で負荷と釣り合った状態にするには、電機子電圧を何[V]に制御しなければならないか。最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)8 (2)80 (3)192 (4)200 (5)208
(b)負荷は、トルクが一定で回転速度に対して機械出力が比例して上昇する特性であるとして、磁気飽和、電機子反作用、機械系の損失などは無視できるものとする。
電動機の回転速度を$1320[min^{-1}]$にしたときに、界磁電流を$I_{f1}[A]$の$\frac{1}{2}$にして、電機子電流がある一定の値で負荷と釣り合った状態にするには、電機子電圧を何$[V]$に制御しなければならないか。最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)216 (2)228 (3)236 (4)448 (5)456
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- (a)・・・(5)
(b)・・・(3)
前提知識
①直流他励電動機の等価回路
直流電動機の各種巻線方式の特徴に関する記事もありますので是非ご覧ください。
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②直流機の回転速度$N[min^{-1}]$、逆起電力$E[V]$の関係式。
ただし、$K_{E}$は逆起電力定数、$Φ[Wb]$は1極当たりの磁束、$N[min^{-1}]$は回転速度。
③直流機のトルク$T[N・m]$、電機子電流$I_{a}[A]$の関係式。
ただし、$K_{T}$はトルク定数、$Φ[Wb]$は1極当たりの磁束、$I_{a}[A]$は電機子電流。
解説
(a)
直流他励電動機の等価回路より、電機子電圧$V[V]$に関する式を立ててみましょう。
$$V=E+R_{a}I_{a}[V]$$
この式に題意より与えられた数値($E=200[V]$、電機子電流$I_{a}=20[A]$、電機子抵抗$R_{a}=0.4[Ω]$)を代入すると次のようになります。
$$\begin{align}V&=E+R_{a}I_{a}\\&=200+0.4×20\\&=208[V]\end{align}$$
よって(a)の答えは(5)となります。
(b)
この問題は、変更後の電機子電圧$V'[V]$を求める問題となりますが、電機子電圧$V'[V]$を求めるためには、条件変化後の逆起電力$E'[V]$と電機子電流$I_{a}'[A]$を求める必要があります。電機子抵抗$R_{a}[Ω]$は変化しないので一定です。
まずは、条件変化後の逆起電力$E'[V]$を求めていきます。『前提知識②』式より、逆起電力$E[V]$と回転速度$N[min^{-1}]$、磁束$Φ[Wb]$には次のような比例関係があることが分かります。
$$E∝ΦN$$
又、題意より『界磁磁束は界磁電流に比例するものとして』とあるので、界磁磁束$Φ[Wb]$と界磁電流$I_{f}[A]$には、$$Φ∝I_{f}$$の関係があるので、
$$E∝I_{f}N$$
の関係があることが分かります。条件変化後の回転速度$N’=1320[min^{-1}]$、界磁電流$I_{f1}’=\frac{1}{2}I_{f}[A]$であるので、条件変化後の逆起電力は、
$$\begin{align}E’&=\frac{N’}{N}×\frac{I_{f1}’}{I_{f1}}×E\\&=\frac{1320}{600}×\frac{1}{2}×200\\&=220[V]\end{align}$$
となります。次に条件変化後の電機子電流$I_{a}'[A]$を求めましょう。『前提知識③』より、条件変化前のトルク$T[N・m]$と、条件変化後のトルク$T'[N・m]$に関する式を示すと、
$$T=KΦI_{a}[N・m]$$
$$T’=KΦ’I_{a}'[N・m]$$
となります。題意より、トルクは一定とあるので、$$T=T’$$
となり、$I_{a}'[A]$を求める式に変換し、値を求めると、
$$\begin{align}I_{a}’&=\frac{Φ}{Φ’}×I_{a}\\&=2×20\\&=40[A]\end{align}$$
となります。
最後に電機子電圧$V'[V]$を求めると、
$$\begin{align}V’&=E’+R_{a}I_{a}’\\&=220+0.4×40\\&=236[A]\end{align}$$
となります。
よって(b)の答えは(3)となります。
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