直流電動機(DCモータ)を分解して構造・動作の仕組みを徹底解説!

皆さんこんにちは!「機械の泉」管理人NORIです!

今回は「分解してみたシリーズ」第一弾ということで、直流電動機の実物分解・解説を行いたいと思います。

当記事は初の試みですので温かい目でご覧いただけると幸いです。

注意事項
分解を行う際は安全に十分に配慮してください。当記事は分解をお勧めする記事ではありませんので、ケガに対しての責任は一切負いません。

当記事の目的は以下のように設定します。

~当記事の目的~


直流電動機の構造を実物の分解を通して理解する。


電験三種で学んだ直流電動機の構造を実物と見比べることで知識の補強をする。


3スロットDCモータの回転メカニズムを理解する

直流電動機(DCモータ)の分解過程を見る

今回直流電動機(DCモータ)を分解していくわけですが、分解に用いるモータは以下<画像1>の小型モータになります。

<画像1>

埃を被っていた「ラズベリーパイ ライントレースカー」の車輪駆動モータです。

では、バラシてみましょう。

このモータを取り外してカバーを外すと<画像2>のような状態になります。

<画像2>

直流モータなので電源線が2本、プラスマイナスを接続する線となります。皆さんも一度は見たことのあるモータだと思います。

次に<画像3>のように電源線が繋がっている本体の黒い部分を切り離します。

<画像3>

そして最後に<画像4>のように回転子を引っ張り出します。

<画像4>

分解はここで終わりです。非常に簡単です。

今回の分解で以下のような構成要素に分解できました。

<画像5>

では次の項目からはそれぞれの構成要素について電験3種と絡めながら見ていこうと思いますが、まずは電験でよく見る「直流電動機のイラスト」を見ておきましょう。

<画像6>

学習をされている方にとっては見慣れたイラストかと思います。

この画像をもとに実物と見比べてみましょう。

固定子を見てみる

固定子というのは<画像7>のような部分であり、その役割としては「回転子にトルクを発生させるための磁束を発生させること」です。

<画像7>

固定子には「永久磁石型」と「電磁石型」がありますが、今回分解したモータは「永久磁石型」になります。つまり磁極が発生する磁束は一定となります。

<画像8>を見てみると永久磁石が左右に2枚用いられています。電験でよく見るイラストでは、左右でN極・S極のみとなっていますが、磁石には必ずN極・S極の両方が存在しています。

電荷は「+(正電荷)」と「-(負電荷)」が単独で存在しますが、磁石の場合には「Nのみ」と「Sのみ」が存在することはありません。棒磁石を半分に割っても「Nのみ」「Sのみ」にはならない。ということです。

したがって、今回の実物をイラストに置き換えると<画像8>右下のようになるわけです。

<画像8>

磁界の方向は「NからS」。これは確実に押さえておきましょう。

ブラシを見てみる

イラスト中のブラシと、今回ばらしたモータに用いられているブラシを見比べてみましょう。

<画像9>

今回ばらしたモータには金色のヘラのようなブラシが出てきました。これはイラストの黒いブラシが間違えているわけではありません。インターネットで「カーボンブラシ」と検索してみると、全く似たような黒い四角いブラシが出てきます。

結局、ブラシにも様々あるのです。

このブラシというのは整流子(後ほど説明)に常に接触した状態となっており、整流子は回転子と共に回転します。したがってブラシと整流子の間には摩擦損失が生じ、劣化していきます。今回バラしたモータはあまり使用していなかったためブラシが非常にきれいな状態となっています。

~column~


モータには「ブラシレスDCモータ」というものもあります。これはその名の通りブラシ・整流子が存在しないモータであり、今回用いているDCモータよりも保守が容易であるというメリットがあります。

回転子を見てみる

回転子というのは<画像10>のような部分の事をいい、「電気的エネルギー機械的エネルギー(回転)に変換する」電動機の肝となる部分かと思います。もちろんほかの要素も大事なのは言うまでもないのですが。

<画像10>

では、回転子の実物の詳細を見てみましょう。<画像11><画像12>参照。

<画像11>
<画像12>

ここでは電機子巻線電機子鉄心、そして整流子ブラシについて説明します。

電機子巻線と電機子鉄心

このDCモータの回転には、「N極・S極の反発力・吸引力」を利用しています。

まず↓<画像13>をご覧ください。

<画像13>

<画像13>では、鉄心に巻線が施してあります。

この巻線に電流を流すと「右ねじの法則」により上向きに磁界が生じます。この時、中にある鉄心が磁束密度を強めてくれるのです。

簡単に言えば磁力が強まるのです。

電機子巻線と電機子鉄心の主な役割は、この磁束密度を生じさせること。になります。

補足までに「右ねじの法則<画像14」を載せておきます。

<画像14>

これは、電流と磁界を入れ替えても成立します。

積層鉄心

ここでもう一度<画像11>を引っ張ってきます。

再掲<画像11>

電機子鉄心を見てみると、なにやら薄いものが何枚も積み重なっているような構造となっています。

これは「積層鉄心」と呼ばれるものになります。この「積層鉄心」が用いられる理由は、

渦電流損を軽減させるため
です。電流が流れるとジュール熱という損失が生じることは皆さんもご存じでしょう。
後ほど解説しますが、この電動機は回転子に生成されるN極・S極が頻繁に入れ替わります。その入れ替わりの際、磁界が向きを変えるのですが、鉄心には↓<画像15>のように、その磁界の変化を妨げる方向に渦電流が生じるのです。
<画像15>

しかし<画像15 右>のように、1枚1枚絶縁した薄い鋼板を積み重ねた積層鉄心ならば、図の方向に磁束が貫けば渦電流損を低減できます。電験では「この磁束の方向がどちら向きならば渦電流損が軽減できるのか。」いったことが問われたこともあります。

実物もこの論理に従った構造となっているのだと思われます。<画像16>参照。
<画像16>

回転メカニズムを追って見る

まず、回転メカニズムを追って見る前に一度回転の様子を見てみましょう。

<GIF画像17>

1回転の間の全ての瞬間で説明するのはあまりにも長くなるので、考え方が理解できる瞬間を3つだけ切り取って解説していきます。


では回転子の実物をイラストに起こして回転メカニズムを見てみましょう。↓<画像18>

<画像18>

<画像18>では分かりやすいように電機子巻線に色を付けています。整流子には「整流子片(整流子の構成要素)が3つ」付いており、1整流子片あたり2本の導体が接続されています。

実物では整流子と回転子(電機子巻線と電機子鉄心)は同一軸(同一シャフト)上で共に回転する構造となっていますが、回転のメカニズムを順を追って説明する際には非常に見づらくなってしまうので<画像19>のように、ブラシ・整流子を下に分けて書きたいと思います。

<画像19>

整流子が2つあるように見えますが、1つであると考えてください。又電源のプラスにつながっている整流子片を黒マイナスにつながっている整流子片を赤としましたので若干見やすくなったかと思います。


状態1

<画像20>にあるように、ブラシと接触している整流子片は2つとなっており、下の1つはどこにもつながっていません(フリー)。この状態では各巻線に図の方向の電流が流れます。是非指で電流の流れを追って見てください。

黒の整流子片から電流が出て、赤の整流子片に電流が入っていくということです。ブラシと接触していない整流子片は電流の中継地点となっているだけとなります。

<画像20>

ここで「右ねじの法則」を適用すると、<画像21>のようなN・S配置となり、固定子の永久磁石と回転子に生成された磁界により「吸引・反発」の関係が生じます。

<画像21>

どこの関係を見てみても、「時計回り」に回転するような方向に力が生じているのが分かります。

状態2

<画像22>では、整流子の左2つがプラス、右の1つがマイナスの電源につながっています。

ここで重要なのが青の電機子巻線です。青の巻線の出入り口共に電源のプラスに接続されています。これでは電流は流れません。

したがって、電流が流れるのは茶色と黄色の巻線のみとなります。

<画像22>

ここでも「右ねじの法則」を適用すると、<画像23>のようなN・S配置となり、固定子の永久磁石と回転子に生成された磁界により「吸引・反発」の関係が生じます。

<画像23>

青の巻線には電流が流れていないので磁界も生じていませんが、残りの2つ(茶色と黄色)には磁界が発生し力が働いています。

この状態2の場合も、状態1と同様に「時計回り」回転するような力が働いています。

状態3

<画像24>では、上の整流子片1つがフリー、左下の整流子片がプラス、右下の整流子片がマイナスにつながっています。

その場合、各電機子巻線に画像の方向に電流が流れます。ここもぜひ指で追って見てください。

<画像24>

ここでも「右ねじの法則」を適用すると、<画像25>のようなN・S配置となり、固定子の永久磁石と回転子に生成された磁界により「吸引・反発」の関係が生じます。

<画像25>

ここでも「吸引・反発」の関係を見てみると、「時計回り」回転するような力が働いています。

ブラシ・整流子の存在意義

状態1⇒状態3までの間で回転子に起きた変化と、ブラシ・整流子の役割は<画像26>の通りです。

<画像26>

結局この回転子は、ブラシ・整流子によって「常に時計回り」に回転することが出来るのです。これを踏まえたうえでもう一度<GIF画像17>を見てみてください。ここをクリック。

以上が今回分解した直流電動機の構造と回転メカニズムの解説になります。

直流機をより深く学ぶためのオススメの本

<初心者向け>モータ技術のすべてがわかる本

こちらの本は本章で取り扱った直流モータのみならず、誘導モータ同期モータに関しても非常に分かりやすく詳細に書いてあります。また、この本の最大の特徴ともいえるのが、フルカラーという点です。フルカラーイラストをふんだんに用いていますので、機械科目において重要な「脳内でのイメージ材料」を鮮明に手に入れることが出来るでしょう。これは機械科目の学習を行う上で重要な能力であり、当サイトも意識している点であります。

その内容と分かりやすさは、表紙にも記載のある通り、まさに、「モータのことはこれ1冊でOK」な本となっています

<上級者向け>メカトロニクスのモータ技術

こちらを一言で表現するならば、DCモータを極めるための本です。個人的に非常に難しい本だと感じましたが、その分学びも多くありました。

内訳としては、DCモータ絡みのページが400ページ強。電磁気に関するページが60ページほど。となっています。電験3種どころか2種・1種でも出題されないような、どちらかというと「モータ開発者・使用者」等の実務者向けの本であるように、個人的には思います。したがって<上級者向け>としました。

それでも私のような人間にもある程度理解できるよう書いてあるのが本書の素晴らしい点であると感じています。

本自体の重厚感・紙質にもこだわりぬかれた「高級な贅沢品」であると感じました。

終わりに

今回は「分解してみたシリーズ」第一弾ということで、小型の直流電動機(DCモータ)の分解を行い、解説を行いました。今までの記事と違うところと言えば、

実物を見ながら学べる

というところです。

実物とイラストを使い分けながら、時には実物画像にイラストを描いたりしながら、皆様に分かりやすい記事を書いていきたいと思っています。

個人的にはもっと大きなDCモータ誘導電動機同期電動機等々、構造が気になるものはたくさんあります。

読んでくださる方の学習の手助け”と”自分の勉強”も兼ねて、今後も分かりやすい解説を心がけながら記事を書いていきたいと思います。

「直流機計算に用いる公式」等、その他直流機の記事や、誘導機・同期機・変圧器等の解説記事も書いています。興味のある方は是非見ていただけると嬉しいです。

twitterアカウントもありますので、是非お話ししましょう(^^♪

それではここまで読んで頂きありがとうございました。

お疲れさまでした(*_ _)

 

 

 

 

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