<H22年度(2010年)問2> 直流発電機の固定損を求める計算問題(解説あり)

問題

直流発電機の損失は、固定損、直接負荷損、界磁回路損及び漂遊負荷損に分類される。
定格出力50[kW]、定格電圧200[V]の直流分巻発電機がある。この発電機の定格負荷時の効率は94[%]である。このときの発電機の固定損[kW]の値として、最も近いのは次のうちどれか。
ただし、ブラシの電圧降下と漂遊負荷損は無視するものとする。また、電機子回路及び界磁回路の抵抗はそれぞれ0.03[Ω]及び200[Ω]とする。

(1)1.10 (2)1.12 (3)1.13 (4)1.30 (5)1.32

解答を見る
(1)

前提知識

①直流分巻発電機の等価回路

<画像1>

②直流機の損失

直流機の損失について下のスライド(4枚)にまとめましたので参考にしてください。

直流機損失概要
直流機損失概要~直接負荷損~
直流機損失概要~漂遊負荷損・鉄損~
直流機損失概要~機械損・励磁損~
previous arrow
next arrow
 

解説

題意より、この直流発電機の出力は$P_{o}=50[kW]$であり、定格負荷時の効率$η=94[\%]$なので発電機の入力$P_{i}[W]$は次のようになります。

$$\begin{align}P_{i}&=\frac{50×10^{3}}{0.94}\\&=53191[W]\end{align}$$

全損失$W_{loss}[W]$は、

$$\begin{align}W_{loss}&=P_{i}-P_{o}\\&=53191-50000\\&=3191[W]\end{align}$$

ここで、固定損を$Wm[W]$、直接負荷損を$W_{a}[W]$、界磁回路損を$W_{f}[W]$、漂遊負荷損を$W_{s}[W]$とすると、全損失$W_{loss}[W]$は次のように表されます。

$$W_{loss}=W_{m}+W_{a}+W_{f}+W_{s}[W]$$

題意より、『漂遊負荷損$W_{s}$は無視できる』とあるので全損失$W_{loss}[W]$は、

$$W_{loss}=W_{m}+W_{a}+W_{f}[W]$$

となります。次に各種損失を求めるために各部分に流れる電流を求めてあげましょう。

負荷電流$I[A]$は、

$$\begin{align}I&=\frac{P_{o}}{V}\\&=\frac{50×10^{3}}{200}\\&=250[A]\end{align}$$

界磁電流$I_{f}[A]$は、

$$\begin{align}I_{f}&=\frac{V}{R_{f}}\\&=\frac{200}{200}\\&=1[A]\end{align}$$

よって、電機子電流$I_{a}[A]$は、

$$\begin{align}I_{a}&=I+I_{f}\\&=250+1\\&=251[A]\end{align}$$

となります。直接負荷損は『前提知識②』中の「電機子巻線の銅損」となるので、電機子巻線抵抗$R_{a}[Ω]$による損失を求めると、

$$\begin{align}W_{a}&=R_{a}I_{a}^{2}\\&=0.03×251^{2}\\&=1890[W]\end{align}$$

となります。次に界磁抵抗$R_{f}[A]$による損失である界磁回路損$W_{f}[W]$を求めると,

$$\begin{align}W_{f}&=R_{f}I_{f}^{2}[W]\\&=200×1^{2}\\&=200[W]\end{align}$$

となります。よって固定損$W_{m}[W]$は、

$$\begin{align}W_{m}&=W_{loss}-W_{a}-W_{f}\\&=3191-1890-200\\&=1101[W]\\&≒1.10[kW]\end{align}$$

よって答えは(1)となります。

直流機関連記事&オススメの書籍

関連記事

関連記事

直流電動機の励磁方式 皆さんこんにちは!NORIです! 前回は下リンクの記事にて、直流電動機の基本構造を説明しました。ここで少復習ですが、直流電動機の固定子磁極の役割は何でしたでしょうか? 正解は「磁界を発生させること[…]

関連記事

皆さんこんにちは!NORIです! 前回はこちらの記事↓ 【直流分巻・他励方式について詳しく】[sitecard subtitle=関連記事 url=https://kikai-maschine.com/2021/11/22/dc-m[…]

関連記事

[adcode] dcモーター(直流電動機)とは? dcモーター(直流電動機)は、 直流電源(dc)を接続することにより回転するモーター(電動機) のことを言います。 今回はdcモーターについての理解を深めるためにdcモーター[…]

オススメの書籍

メカトロニクスのモータ技術

こちらを一言で表現するならば、DCモータを極めるための本です。個人的に非常に難しい本だと感じましたが、その分学びも多くありました。

内訳としては、DCモータ絡みのページが400ページ強。電磁気に関するページが60ページほど。となっています。電験3種どころか2種・1種でも出題されないような、どちらかというと「モータ開発者・使用者」等の実務者向けの書籍であるように、個人的には思います。したがって<上級者向け>としました。

それでも私のような人間にもある程度理解できるように書いてあるのが本書の素晴らしい点であると感じています。

本自体の重厚感・紙質にもこだわりぬかれた「高級な贅沢品」であると感じました。

メカトロニクスのモーター技術 [ 見城尚志 ]
created by Rinker
¥5,478 (2024/12/07 09:10:17時点 楽天市場調べ-詳細)

電動機関連オススメの書籍3選

関連記事

こちらの記事の書籍評価は完全主観に基づいたものです。あくまでも参考程度にご覧ください。   こんにちは!NORIです! 今回は電験機械科目の学習をサポートし、理解を深めてくれる書籍・参考書を三冊紹介したいと思いま[…]

 

電気系の情報発信をしています。