【電験】直流電動機(dcモーター)の速度制御法【ワードレオナード?静止レオナード?】

皆さんこんにちは!NORIです!

今回は「直流電動機の速度制御法」について書きたいと思います。速度制御法というのは文字通り、電動機の回転速度$N[min^{-1}]$を制御する方法のことです。横文字が多く出てくるのでなかなか難しい範囲かと思いますが、分かりにくいところほど「イラスト」は効果を発揮すると考えます。学習を進める皆様も、ぜひ一度自らの手で描いてみると意外にすんなりと理解できるかもしれません。

それでは内容に入っていきます。

速度制御法の種類

直流電動機の速度制御法は大きく分けて3つあります。それは以下の通りです。

  • 界磁制御法
  • 抵抗制御法
  • 電圧制御法

回転速度の式$$N=\frac{E}{KΦ}=\frac{V-R_{a}I_{a}}{KΦ}$$を踏まえた上で、これらの3つについて説明します。

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界磁制御法

界磁制御法は「磁束$Φ$を変化させる」ことで速度制御をする方法です。

画像1

<画像1>の分巻電動機の回路図を見てください。分巻や複巻の場合には、「分巻」巻線に直列に抵抗を挿入することで、界磁電流を制御し、界磁磁束$Φ$を制御します。

ここからは少し発展的な内容になります。

回転速度$$N=\frac{E}{KΦ}=\frac{V-R_{a}I_{a}}{KΦ}$$より、$V$、$R_{a}$、$I_{a}$の3つを一定とすると分子は一定になります。

回転角速度$$ω[rad/s]∝N[min^{-1}]$$であり、 $$\frac{V-R_{a}I_{a}}{KΦ}$$の分子は定数としたので、$$N∝\frac{1}{Φ}$$となり、結果$$ω∝\frac{1}{Φ}・・・①$$が得られます。

次に$$T=KΦI_{a}$$より$I_{a}$を一定としたので、$$T∝Φ・・・②$$が得られます。

よって①、②式より出力$$P=ωT$$は一定となり、定出力特性となります。

分巻・複巻は分巻巻線に直列に抵抗を挿入し、磁束Φを制御しましたが、他励の場合は界磁巻線に接続する電源を「可変電圧電源」とすることで磁束の制御を行います。

特徴

広範囲の制御が可能です。

抵抗制御法

抵抗制御法は、電機子巻線抵抗に直列に可変抵抗を接続して、電機子巻線に加わる電圧を変えることで、速度制御を行います。

簡単にイメージできると思うので、詳しい説明は省略します。

特徴

抵抗制御法は界磁制御法の特徴とは異なり、制御範囲が狭いです。また、接続した可変抵抗による電力損失が大きいため効率が悪いといった特徴があります。そのため現在は実用されていない方式だそうです。

電圧制御法

電圧制御法は他励電動機に採用され、電圧制御法にはいくつかの種類があります。(横文字ばかりなのでややこしいですね)

  • ワードレオナード方式
  • 静止レオナード方式
  • 直流チョッパ方式

がおもなものになります。

私自身苦手な範囲だったのですが頑張ってまとめました。(*_ _)

ワードレオナード方式

ワードレオナード方式は、

 

三相誘導電動機(または同期電動機)に直結した直流発電機により発生した電圧を制御することで、速度制御を行う

というものです。

 

。。。。。。??

 

初めて学ぶ方は頭に「」が浮かぶと思います。私もそうでした。冒頭にも記しましたが、文章で理解しがたいときは自分の手でイラストを描くとすんなりわかったりします。下にイラストを示します。

画像2

画像2の他励式直流発電機を回路図に置き換えてみると画像3のようになります。

画像3

イラストにしてもややこしい事には変わりないですね。順を追って説明すると、

  1. 三相電源により、交流電動機を回転する。
  2. 交流電動機に接続された他励式直流発電機の回転子が回転し、発電する。
  3. 他励式直流発電機の端子電圧を、他励式直流電動機の電機子へ加える。

ということをやっています。

さらに、直流電動機の回転速度の調整は以下の通りです。

  1. 他励式直流発電機の磁束を変化させることで、発電機の出力電圧を変化させる。
  2. 電動機に加わる電圧が変化し、電動機の回転数が変化する。

こんなにややこしいことをやっているのは、「半導体技術が未発達だったから」のようで、現在では「交直変換装置」に置き換えられています。これが次に説明する「静止レオナード方式」です。

静止レオナード方式

静止レオナード方式は、ワードレオナード方式の交流電動機と直流発電機の部分が「交直変換装置」に置き換えられたもので、下のイラストのようになります。

画像4

静止レオナード方式の良い点としては、交流電動機や直流発電機がないので損失が少なく、効率が良いことです。

一方、交直変換装置にコンバータ(交流→直流)/インバータ(直流→交流)機能を持たせなければ、「電動機から電源に電力を返す(回生制動)」ができないという問題もあったりします。

しかし、ワードレオナード方式に比べて単純で分かりやすくなりました。

直流チョッパ方式

次は直流チョッパ方式です。チョッパというのは、某トナカイの事ではありません(〃艸〃)。電流を切り刻んで(チョッパ)電圧調整する方式ですね。

直流電動機の電機子に加わる電圧を、直流チョッパにより調節することで速度制御するものになります。

直流チョッパ回路は電験3種では、「パワエレ」分野に該当し、少々複雑なものになります。よって直流チョッパ回路に関しては、別途記事を設けたいと思いますのでここでは省略します。

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それでも私のような人間にもある程度理解できるよう書いてあるのが本書の素晴らしい点であると感じています。

本自体の重厚感・紙質にもこだわりぬかれた「高級な贅沢品」であると感じました。

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