皆さんこんにちは!NORIです!
今回は「電圧変動率」についての記事を書いていきたいと思います。若干苦手意識のある方も見えるかと思いますが、頑張っていきましょう!
それでは、Let’s go!!
電圧変動率$ε$の定義
電圧変動率$ε$は「二次側定格電圧に対する電圧変動の割合」になります。
また、”電圧変動”は「無負荷時二次側電圧$V_{20}$ー二次側定格電圧$V_{2n}$」で表されるので、電圧変動率は、
という式で定義されます。
定義に関してはそんなに言うことがないです……(笑)
等価回路・ベクトル図から考えよう
以前、「変圧器」に関してのこちらの記事↓
皆さんこんにちは!NORIです! 前回は変圧器の基礎・構造①ということで、変圧器の系統での役割・変圧の仕組み・変圧比αの導出を行いました。ぜひご覧ください。↓こちら [sitecard subtitle=関連記事 url=htt[…]
にてL型等価回路・T型等価回路について学習し、「L型等価回路のほうが計算が簡単であり実用上問題のない精度での計算が可能である」と説明しました。なので、電圧変動率の計算もこのL型等価回路を基に、さらに見やすくした形で説明していきます。
まず、通常のL型等価回路は<画像1>のようになるのでした。
ここから簡略化するのですが、まずは「励磁回路」を省略します。励磁回路を省略すると、「励磁電流が無視されるけど大丈夫?」となりますが、実用上問題ないようなのでOKだそうです。我々が必要な精度させ手に入れば細かいことはいいのだ。というスタンスですね。
そして、一次抵抗と二次抵抗・一次リアクタンスと二次リアクタンスをまとめるのですが、<画像1>の等価回路は「二次側を一次換算した等価回路」となっています。電圧変動率は、二次側をベースとして考えますので、「一次側を二次換算した値」を用いて計算します。(一次側を二次換算する具体的な方法はこちらにあります。)
つまり、「二次換算した一次側抵抗$r_{1}^{‘}$+二次抵抗$r_{2}$=$r$」、「二次換算した一次側リアクタンス$x_{1}^{‘}$+二次抵抗$x_{2}$=$x$」と置きます。
以上の事をすると、<画像2>のような非常にシンプルな等価回路が出来上がりました。
どうでしょうか?Very simpleですよね。
ここで二次電流は定格電流、そして各電圧値を書き換えて、$V_{20}$は負荷を開放したときの電圧(無負荷電圧)、$V_{2n}$は二次定格電圧としました。
では次にこれをベクトル図に起こしてみましょう。初心者の方がベクトル図を書くときは、まずは式を書いてみると分かりやすいです。
$$\dot{V}_{20}=(r+jx)\dot{I}_{2n}+\dot{V}_{2n}$$
この式から、$V_{2n}$からベクトルを足していって$V_{20}$へたどり着くイメージを得ることが出来ます。ここでは初心者の方のために一歩ずつ行きます。
ベクトル図の書き方
OKでしょうか?
ではこのベクトル図から電圧変動率を「近似式」と「近似でない式」と二種類に分けて考えていきましょう。
電圧変動率(近似式)
<ステップ5>のベクトル図から、θを用いて計算に必要な箇所を書き出してみると、↓<画像3>のようになります。
近似が考えられるのは、$V_{20}$と$V_{2n}$の間の角度が非常に小さい時です。
この時↑<画像3>のベクトル図より、$$V_{20}≒V_{2n}+rI_{2n}cosθ+xI_{2n}sinθ・・・①$$と近似することが出来ます。
<画像3>では$V_{20}$と$V_{2n}$が離れているように見えますが、頭の中で角度を狭めてください。
次に冒頭で記した電圧変動率の式、$$ε=\frac{V_{20}-V_{2n}}{V_{2n}}×100[\%]$$に①式を代入すると、
$$\begin{align}ε&=\frac{V_{2n}+rI_{2n}cosθ+xI_{2n}sinθ-V_{2n}}{V_{2n}}×100\\&=\frac{rI_{2n}}{V_{2n}}cosθ×100+\frac{xI_{2n}}{V_{2n}}sinθ×100\end{align}$$となりました。
さぁ、ここで右辺第一項の$$\frac{rI_{2n}}{V_{2n}}×100$$の部分を見てみると、分母が”定格電圧”、分子が”抵抗による電圧降下”となっています。つまりこの項の表すものというのは、「定格電圧に対する、抵抗による電圧降下の割合」ということになります。これを、「百分率抵抗降下($p$)」と言います。
第二項も同じように考えると、$$\frac{xI_{2n}}{V_{2n}}×100$$は「定格電圧に対する、リアクタンスによる電圧降下の割合」となり、これを「百分率リアクタンス降下($q$)」と言います。
ここまでをまとめましょう。
百分率抵抗降下 $p=\frac{rI_{2n}}{V_{2n}}×100[\%]$
百分率リアクタンス降下 $q=\frac{xI_{2n}}{V_{2n}}×100[\%]$
電圧変動率 $ε=pcosθ+qsinθ[\%]$
電圧変動率(近似ではない式)
ここからは先ほど導いた式よりも、もう少し正確な値を導ける式を導出していきたいと思います。用いるのは先ほども登場した<画像3>のベクトル図です。近似式では$V_{2n}$と$V_{20}$の間の角が非常に小さいと仮定しましたが、今回はこの角度も考慮して電圧変動率の式を導いていきます。三種の内容を超えますので、式を追う方は覚悟してください( ´∀` )
なるべく三種の方にも分かるように丁寧に導出していきますので、先に注意しておきますが長くなります。(笑)
角度を考慮するので、ベクトル図では↓<画像4>のように赤色の部分まで考慮して計算に含めます。
まず電圧変動率の式を、$$\begin{align}ε&=\frac{V_{20}-V_{2n}}{V_{2n}}×100\\&=(\frac{V_{20}}{V_{2n}}-1)×100\end{align}$$と表しておきましょう。こちらの方が後々都合がよいので!
次に<画像4>より$V_{20}$を、「三平方の定理」より求めましょう。(既にめんどい)
「三平方の定理」より以下の式がでてきます。
ここから$\frac{V_{20}}{V_{2n}}$の形にしたいので、右辺のルートの中から$V_{2n}$を引っ張ってきます。すると、
一行目は$V_{2n}^{2}$をくくりだすときに、カッコ内を$V_{2n}$で割っただけなのですが、こちらをクリックすると展開した超丁寧Verを確認できます。
- 超丁寧ver
- $$\begin{align}V_{20}&=\sqrt{(V_{2n}+rI_{2n}cosθ+xI_{2n}sinθ)^{2}+(xI_{2n}cosθ-rI_{2n}sinθ)^{2}}\\&=\sqrt{(V_{2n}^{2}+r^{2}I_{2n}^{2}cos^{2}θ+x^{2}I_{2n}^{2}sin^{2}θ+2V_{2n}rI_{2n}cosθ+2V_{2n}xI_{2n}sinθ+2rxI_{2n}^{2}cosθsinθ)+(x^{2}I_{2n}^{2}cos^{2}θ-2rxI_{2n}^{2}cosθsinθ+r^{2}I_{2n}^{2}sin^{2}θ)}\\&=\sqrt{V_{2n}^{2}(1+\frac{r^{2}I_{2n}^{2}}{V_{2n}^{2}}cos^{2}θ+\frac{x^{2}I_{2n}^{2}}{V_{2n}^{2}}sin^{2}θ+\frac{2rI_{2n}}{V_{2n}}cosθ+\frac{2xI_{2n}}{V_{2n}}sinθ+\frac{2rxI_{2n}^{2}}{V_{2n}^{2}}cosθsinθ)+V_{2n}^{2}(\frac{x^{2}I_{2n}^{2}}{V_{2n}^{2}}cos^{2}θ-\frac{2rxI_{2n}^{2}}{V_{2n}^{2}}cosθsinθ+\frac{r^{2}I_{2n}^{2}}{V_{2n}^{2}}sin^{2}θ)}\\&=\sqrt{V_{2n}^{2}(1+\frac{rI_{2n}}{V_{2n}}cosθ+\frac{xI_{2n}}{V_{2n}}sinθ)^{2}+V_{2n}^{2}(\frac{xI_{2n}}{V_{2n}}cosθ-\frac{rI_{2n}}{V_{2n}}sinθ)^{2}}\end{align}$$
そして、
$$\frac{V_{20}}{V_{2n}}=\sqrt{(1+\frac{rI_{2n}}{V_{2n}}cosθ+\frac{xI_{2n}}{V_{2n}}sinθ)^{2}+(\frac{xI_{2n}}{V_{2n}}cosθ-\frac{rI_{2n}}{V_{2n}}sinθ)^{2}}$$
となりました。ここでなんだか見覚えのある個所が出てきましたね!$$\frac{rI_{2n}}{V_{2n}}と\frac{xI_{2n}}{V_{2n}}$$です。
ここで復習すると、
百分率リアクタンス降下 $q=\frac{xI_{2n}}{V_{2n}}×100[\%]$
$$(1+x)^{a}=1+ax+\frac{a(a-1)}{2!}x^{2}+\frac{a(a-1)(a-2)}{3!}x^{3}・・・\qquad(ただし|x|<1)$$階乗「!」は”1 からある数までの連続する整数の積”を言います。以下に例を示します。
3!=3×2×1=6
5!=5×4×3×2×1=120
すると②式は、
$$\begin{align}&1+\frac{1}{2}\{p^{‘2}+q^{‘2}+2(p^{‘}cosθ+q^{‘}sinθ)\}-\frac{1}{8}\{p^{‘2}+q^{‘2}+2(p^{‘}cosθ+q^{‘}sinθ)\}^{2}+\frac{1}{16}\{p^{‘2}+q^{‘2}+2(p^{‘}cosθ+q^{‘}sinθ)\}^{3}+……..\\&≒1+\frac{1}{2}(p^{‘2}+q^{‘2})+(p^{‘}cosθ+q^{‘}sinθ)-\frac{1}{8}\{4(p^{‘}cosθ+q^{‘}sinθ)^{2}\}・・・③\end{align}$$
となりました。もう少し頑張ってください(´;ω;`)
ここからさらに展開してまとめるわけですが、先ほども用いた次の関係を用います。
あー--!終わりが近づいてきました…….
長かったですが次式を得ることが出来ました。、
$$\frac{V_{20}}{V_{2n}}=1+p^{‘}cosθ+q^{‘}sinθ+\frac{1}{2}(q^{‘}cosθ-p^{‘}sinθ)^{2}$$
そして電圧変動率の式、
$$ε=\{\frac{V_{20}}{V_{2n}}-1\}×100$$に代入しましょう。
すると、
$$\begin{align}ε&=\{1+p^{‘}cosθ+q^{‘}sinθ+\frac{1}{2}(q^{‘}cosθ-p^{‘}sinθ)^{2}-1\}×100\\&=\{p^{‘}cosθ+q^{‘}sinθ+\frac{1}{2}(q^{‘}cosθ-p^{‘}sinθ)^{2}\}×100\end{align}$$
皆さん。次でようやく終わりです(´;ω;`)
$p^{‘}とq^{‘}をpとqに直しましょう$
$$\begin{align}ε&=\{\frac{p}{100}cosθ+\frac{q}{100}sinθ+\frac{1}{2}(\frac{q}{100}cosθ-\frac{p}{100}sinθ)^{2}\}×100\\&=pcosθ+qsinθ+\frac{(qcosθ-psinθ)^{2}}{200}[\%]\end{align}$$
ああああ!やっと終わりましたね(´;ω;`)
では結果をまとめて終わりにしましょう。
まとめ
近似式
$$ε=pcosθ+qsinθ[\%]$$
より精密な式
$$ε=pcosθ+qsinθ+\frac{(qcosθ-psinθ)^{2}}{200}[\%]$$